生きる

今回はいつになく盛大な宴会だった。
無論それだけ危なかったというのもあるが、苦痛に耐えてきた者たちにとって今日という日を迎えられたことはこの上ない喜びなのだろう。
どこからともなく料理や酒が運ばれ、あるものは歌を歌い、食器を楽器代わりにかき鳴らし、そこかしこで笑い声とも叫び声が響いた。
そんな中でもゾロは目を閉じたままじっと横たわっていた。
いつもなら「酒を飲めば治る」というのだが今日に限ってはそんな様子もない。
ナミはルフィが無理やり飲ませようとするのを制し、誰も近づくなと言わんばかりにどんと椅子に座った。
「ねえ、起きてるんでしょ?」
声をかけても彼は無言のままだ。
「あんたがそこまでなんてよっぽどね。詳しいことはわからないけど大体想像つくわ。…馬鹿ね」
「馬鹿かどうかは俺が決める。お前が言うな」
「馬鹿よ」
ゾロの言葉をさえぎるように言葉を紡ぐ。ぐっと喉に熱いものがこみ上げる。
彼がここまでボロボロになったのはルフィのためだ。
あの得体のしれない男はルフィを狙っていた。なのにそのルフィが生きていて目の前の男は瀕死の重傷を負っている。
自分は何もわからない。気を失っていたからだ。
やもすれば自分の知らぬ間に死んでいたかもしれなかったのだ。
「どうせルフィの代わりに俺を。とかでも言ったんでしょ。ほんと馬鹿ね。それでルフィが喜ぶとでも思うの?」
「喜ばねえだろ。ただルフィが生き残ればそれでよかった」
彼の言葉に自分の想像は間違っていなかったことを知る。
それがかえってナミの心を逆なでした。
「はーあ、本当に馬鹿な男。そんなにルフィが大事?」
「大事だろ。船長だ」
それは自分でもわかっている。わかっているからこそそれが許せないのだ。そのいら立ちがついつい本音として口から出てしまう。
「そうね。そうよね。あんたはルフィのためなら死ぬのよね。…私のためには死なないくせに」
言ってしまってはっと思ったがもう後の祭りだ。
「…お前のためになんか死ねるかよ」
少しの沈黙の後ゾロがそうつぶやいた。
「俺が死んでもルフィは生き残るだろうが、お前は無理だろ。」
「…え?」
「お前のためってんなら生き延びるさ。腕一本になろうが足をもがれようが生き延びてやるさ。…死ねるかよ。馬鹿」
「…馬鹿って言わないでよ馬鹿」
「馬鹿馬鹿言うな。…泣くなよ」
「泣いてないわよ。目を閉じてるくせに適当なこと言わないでよ馬鹿」
「あーあ、うるせえ女。付き合ってらんねえ。寝るわ」
そう言うとゾロはそのまま静かな寝息を立て始めた。
「…こんなうるさい中よく寝れるわね」
ブルックとその仲間たちの歌声の中、ナミは軽やかな溜息をついた。