空から一羽の大きな鳥が降り立った。その背には淡い水色の髪をした少女が乗っていた。
切り立った岩場の上に少女は降り立ち、そこからの眺めに目を細めた。
遠く遥かに見える水平線。
海はどこまでも青く、旅立つ船を乗せ暖かく微笑んでいるかに見える。
「ごめんなさいね。ペル。まだ傷も癒えてないのに。」
少女は振り返り、先ほどまで鳥だった男に声をかけた。
「もう大丈夫です。」
男は表情を浮かべるでもなくそうこたえた。
ビビはふっと笑い、海に視線を戻した。
ペルは何もいわず、ビビから少し離れた位置に身体を進めた。
ふわりと長い髪が揺れ、そして、フードの上へと落ちる。
「ありがとう。」
「いえ。」
目を合わせないまま沈黙が続いた。
ビビは日が落ちていく海をずっと見ていた。吹く風もやや冷たくなってきたが、ビビはそこから動こうとしない。
「無礼なのは分かっておりますが、ビビ様。」
「なに?」
突然声をかけられ、ビビは驚いて振り返った。
「・・・行きたかったのでは?」
ペルの言葉にビビは言葉を詰まらせた。
ビビの視線の先にはあの時別れた仲間達の船が見えているのだろう。
泣きながら別れを言い、笑いながら手を降ったあの日。あれからビビは時折寂しげな顔をする。
ペルの真直ぐな目にビビはうつむいた。
「・・・後悔しておられるのですか?」
ペルの言葉にビビは微かにうなづいたように見えた。
「そうね・・・本当をいうと一緒に行きたかったの。最後まで悩んだわ。」
「・・・。」
「・・・でも迷って悩んで気付いたの。私、これ以上はあの船に乗れないって思ったの。」
ビビはもう一度海に視線を戻す。
「とても楽しかったわ。怖い事もあったけどそれ以上にみんな優しくて、強くて。国を救うっていう私のために一生懸命になってくれて。
でも・・・それ以上にこの国を、皆を捨てる事は出来なかった。」
陽はすでに海の中に落ち、辺りは星も瞬きはじめていた。
「あの船は夢を追い求めるものが乗る船です。」
「え?」
「なにも船に乗る事がだけが航海ではありません。ビビ様の夢がこの国にあるなら、ビビ様の選択は正しい。今後、もし、彼等と追い求められる夢が出来た時は追いかけていけばいいではないですか。」
「ペル・・・。」
「無論、その時は私も御一緒します。」
暗闇の中、ペルは微かに笑った。
「・・・そうね、でもそんなことになったらお父様もついて来るって言い出しそう。」
「国王だけでなく、国民全員が行くというでしょうね。」
「国全体で海賊?すごいわね。」
ビビは海賊の格好に身をやつしたコブラの姿を思い浮かべて、笑った。
「では、帰りましょうか。もう冷えてきました。」
ペルは一瞬にして鳥の姿になるとビビを促した。
「そうね。ねえペル。・・・またここに来てもいいかしら?」
「勿論です。駄目といったらあなたは一人でもいってしまいますから。」
「信用ないわね。私。」
「前例がありますから。」
「もう!」
ビビはぴしとペルの頭を叩いた。それが合図かのようにペルは大空へ飛び立った。
「ねえ、ペル。」
「はい」
「海に出たいと思ったらまっ先にあなたに言うわ。」
「光栄です。」
黒い影はそのまま夜空へ溶け込んでいった。
小さな少女の大きな夢は今始まったばかり・・・・。

ひざまづいて手にキスを書きたかったが、ペルはせんだろうということで却下。
ところで何がかきたかったのか分かりません。