くりすます

 

俺はチョッパー。トナカイだ。
真の男を目指して、いままで世話になった人々に別れを告げて海賊船の船医になった。
広い世界へ、俺は旅立ったんだ。

 

 

「うをーーー!!!!!肉ーーーー!!!!」
「ぎゃーーーーーーーー!!!!!」


この船に乗って何回目だろうか。食料が少なくなって来るとこの船の船長が俺を食おうと襲ってくる。
コックまで怪しい目つきで俺を見る始末だ。


「ナミ!ナミーーー!!!助けろー!」


この船で一番強いと思われるナミに助けを求める。
そうするといつもいつも捕獲者をぶっ飛ばしてくれる。・・・別に女に助けを求めてるわけじゃないぞ。こうするのが一番早いからだ。俺は男なんだから女に助けなんて・・・


「大丈夫?チョッパー。」


そう言ってナミはふわりと笑って優しく抱き締めてくれる。
嬉しくなんかねえぞ。こんちくしょう!ただ、ナミの胸の柔らかさが気持ちいいだけなんだ。


後ろに殺気を感じて恐る恐る振り返る。
そこには緑色の髪の魔獣だ。


「ナミ。いつまで抱いてる。あいつらもう行っちまったぞ。」


てめえも早く退けと言わんばかりで俺を睨み付ける。


こここここここわくなんかねえぞ!今だって震えてるのは寒いからだ!


がくがくと震える脚をひずめでたたきながらゾロを見上げる。
「なに焼きもちやいてるの?ね、チョッパー。」
そういってさらに俺をぎゅうと抱き締める。


ナミはあったかくてイイ匂いがして、気持ちいい。
あまりの心地よさに心の奥からほわーんとしてくる。


「おら!行くぞ!」
そういうと俺を無理矢理ナミから引き剥がし、ぷらぷらと干肉のようにぶらさげる。


ちくしょう。俺だって人化すればお前より大きくなれるんだぞ。


ぷらぷらと脚を振ってゾロを睨み付ける。
そんな事を気にしていないようで、ゾロはナミに話し掛ける。
「おい。ウソップがそろそろオッケーだってよ。」
「あ、本当?」
ん?何の話だ。
「じゃ、行こうかしら。あんたは?」
「ああ、俺も後から行く。」
「なんだ?何の話だ?」
なんだか話の輪に入れなくてもどかしい。
「ん?・・・チョッパーはいいの。ほら。この間買ってきた医学書。これ読んで頑張って勉強してね。」
ナミは俺に分厚い医学書を渡し、ゾロと一緒に部屋を出て行った。
一人、キッチンに残った俺は重い本に目を落とす。

 


・・・なんで教えてくれないんだろう・・・。

 

 


次の日も次の日もナミはゾロと一緒にどこかに行く。
と、言っても狭い船内だから大体検討はつく。
倉庫だ。
そこで隠れて何かしてる。他の皆も倉庫に行く機会が多くなった。
こっそり誰もいない時に倉庫に行ってみたが鍵がかかってて入れなかった。

 


皆なんで俺に隠れて・・・俺が入ったばかりの新参者だから仲間に入れてくれないのかな。
喉の奥が熱くなる。

 


別にいいさ。いままでだって一人でやってきたんだ。
一人だって平気だ。

 


ごしごしと目をこすって倉庫を後にする。

 

 

 

「ナミさーーん。こんなもんでいいですかー?」
サンジが港町から大きな樹を抱えてきた。
「なあ、ナミあれなんだ?」
「ん?もみの木よ。24日に飾るの。」
「24日!?」
俺はその日にちに聞き覚えがあった。
俺の誕生日だ。
そうか、あれを飾ってみんなで俺の誕生日を祝ってくれるんだ!


「そうよ。クリスマスでしょ?」
「・・・。」
ナミの言葉に次の言葉が出なかった。


・・・くりすます・・・?


「もみの木を飾ってお祝いするの。ドクトリーヌとしなかった?」
「・・・あ・・・・いや・・・しなかった・・・。」
「楽しいわよー。ターキーとかケーキとか。プレゼント交換とかね。」
うきうきと話すナミの顔が歪んで見えた。
そうだね。楽しそうだね。
そういった俺の声は震えていたと思う。

 

 

 

そりゃあ、俺の誕生日なんて誰にも言ってないし、知ってる訳ないんだ。
ナミに言い渡されたもみの木に飾るオーナメントを磨きあげる。
きらきらしているそれがやけに憎たらしい。
ぽいと壁に向かって投げ付ける。
カツンと音を立ててこっちに何事もなかったかのように跳ね返ってくる。
それがさらにむかついて何度も何度も壁に投げ付ける。
手元のオーナメントを全て投げ終わってしまってから急に涙がこぼれた。
「うう・・・・。」
今日もみんな倉庫に行った。
きっとくりすますの楽しい相談でもしてるんだ。
俺は仲間に入れてもらえないんだ。
ぽろぽろと流れてくる涙もそのままに散らばったオーナメントを拾って磨く。
いいんだ。くりすますが楽しければいいんだ。


きらりと光る球に俺の泣き顔が映った。

 

 

 

大きなもみの木が甲板にそびえたつ。
その大きさにあんぐりと口をあけるしかなかった。
「すげえだろ?これ探すの苦労したんだよねー。」
サンジが満足そうに煙草をふかした。
「すげえ、でけえ。よくこんなの売ってたなー。」
「ああん?この財政が厳しい中、買う訳ねえだろ?山から採ってきたのよ。」
自信満々にサンジが言った。手を傷つける事が大嫌いなサンジが珍しい・・・きっとそれだけくりすますって楽しい物なんだ。
「さって。本日のスペシャルディナーでも作るか。」
「さ、サンジ俺も手伝う!」
なんとかくりすますの輪に入れてほしくてサンジのコートの裾を引っ張る。
「え・・・?それはちょっと・・・そうだ。これからこの木を飾り付けするんだ。ウソップにいいな。きっとあいつ忙しそうだから。」
そう言うとサンジはそそくさとキッチンに消えた。


・・・ちぇっ、ちぇっ。なんだよ。


こつんと木を蹴飛ばしてウソップを探す。
最近ウソップは寝不足なのか目の下にクマを作ってときどきうわ言のように「できねー、おわらねー。」と呟く。
寝ろって言ってるのに全然言う事を聞いてないようだ。
なんだよ。俺は医者だぞ。言う事聞けよ。
「ウソップ。何か手伝う事はないか?」
「あー・・・・?何の・・・ーーー?」
ふらふらのウソップは俺の言葉すら理解出来ていないようでけらけらと笑いながら廊下を歩いていた。
「いや・・・くりすますの準備・・・何かないかと思って・・・。」
「くりすます・・・?あ!ああ!いや、俺の方は何もないぞ!!ナミに聞け!じゃあな!」
そういうと急に走り出していなくなってしまった。「ナミー。」
なんとかナミを見つけだし、飛びつく。
「どうしたの?チョッパー。」
「くりすますだろ?何か手伝おうと思って。」
「え?ああ・・・えーと・・・何もないわ。サンジ君の料理が出るまで大人しく待ってて。」
「でも・・・飾り付けとかあるんだろ?」
「私達でやるから大丈夫よ。部屋に行ってて。ね。」
よしよしと頭を撫でてナミもどこかに行ってしまった。


・・・なんだよ・・・。


がらんとした部屋で脚をぱたぱたとさせる。


無性にドクトリーヌに会いたくなった。
この日になると小さいけどケーキをくれた。
いつも厳しい事ばかり言うけど少しだけ優しくなった。

 

「あいたいな・・・。」

 

 

 

「チョッパー。ちょっぱー。」
ナミの声が聞こえる。くりすますの準備が出来たんだろうか。
甲板にこっそり顔を出すと皆が勢ぞろいしていた。
もみの木には大きな布がかけられている。
なんだ?
「ほら、チョッパー早く。このヒモひいて。」
訳が分からずヒモとナミを見比べる。
「ほら。早く。」
ひけと促されたのでそれを引く。
はらりともみの木の布が落ち、綺麗に飾り付けられて美しい光を放つ木が現れた。
「わあ・・・。」
思わず声を漏らす。
その次の瞬間、勢いよくクラッカーの音が鳴り響いた。

 


「お誕生日おめでとう!」

 


皆の言葉が俺の頭に届くまでに時間がかかった。
「え・・・?」
間抜けな声を出して、俺はぽかんとそこに立ち尽くした。
「今日お誕生日でしょう?ほら、見て。」


ナミがもみの木を指差すのでよく見てみると、俺が磨いた球の数より多く、小さな動物のオーナメントが飾られていた。


「ナミ・・・これ・・・俺だ・・・。」


それは俺の姿をした人形で、しかも一つ一つ表情も仕種も違う。
「わあ!これ、俺だよ!」
喜んでいる物や、怒っているもの、七段変型の全ての俺がそこにいた。


「だろう。俺様が夜なべして作った成果だ!」
ウソップが自信満々に言い放った。
「そうなの。驚かせようと思って。皆でそれに色を塗ってね。ほら、このはみ出てるのがゾロが塗った物よ。」
「ナミ!言うなっつの!」


そうか、倉庫で皆でこれを作ってたんだ。
なのに俺・・・。


「ナミ・・・。」
「ん?どうしたの?」
「ごめんよーーーー。」
「どうしたの?何謝るの?」
ナミは優しく抱き締めてくれた。
本当に申し訳なくて俺はおんおんと泣いた。


「結局クリスマスと一緒になっちまったがな。」
サンジがろうそくのたったケーキを俺に差し出してくれた。
「サンジ・・・。」
「まったくナミさんの胸で泣くなんて今日限りだからな。」
俺はナミからサンジに飛びついた。
「サンジーーー!!」
「うわ!離せ!俺は男に抱きつかれる趣味はねえ!」
なんとか振りほどこうとするが俺はしっかと抱きついた。
「さ、ろうそくを消して。」
ロビンが落ちそうになったケーキを支えて再度俺の前に差し出す。
「う・・・うん・・・。」
ふうとろうそくを消すとウソップが大きな花火を打ち上げてくれた。

 

「俺・・・俺・・・すごく嬉しいよ!」


空に向かって大声で叫ぶ。

 


きっとこの声はドクトリーヌにもヒルルクにも届いてるはずだ。

 

 

 

ちょぱ誕です。おめでとう!君の愛くるしさにかなう物はいないよ。
・・・こっそりroki様に捧げます。