満月の夜は宴だった。
食料も乏しい中での宴会だったのでたいした事はなかったのだが、皆それなりに楽しんでいた。


しかし、ゾロだけはあまり酒も飲まずひとり渋い顔をしていた。

 

 

 


少し欠けた月明かりの中、剣が空を切る音が響いていた。


その太刀さばきはまるで舞でも舞っているかのように美しい月明かりの曲線を描く。
緩やかな動きだと言うのに男の身体には流れる程の汗が浮き出ていて、それすらも月明かりの中、玉のような輝きを放っている。

 

剣がゆっくりと鞘におさめられ、男が大きく息をついた。

 

 


ふと、先ほどから感じていた視線の主に目を向けると、オレンジ色の髪が目に入る。


「珍しいわね。それ何?」
「剣舞だ。決められた型をやってるだけだ。」
「ふうん。毎日毎日ダンベル振り回すだけじゃないんだ。」
ナミがゆっくりと近付いてくる。風呂上がりらしく濡れ髪を拭きながら。
「力まかせに刀振り回したって意味ないからな。」
「そんなもん?」
「そんなもんだ。」
ナミは納得したように首を揺らした。


ゾロから流れる汗に気付いて、首に巻いていたタオルでそれを拭き取る。


「どうしたの?」
「何が?」
「何が?じゃないわよ。この間の宴会でもザルのあんたがお酒全然飲まないし、物思いに耽ってるし、それに、この間の満月の時に珍しくトレーニングしなかったじゃない。」
「・・・。」
「さっさと言いなさい。」
ゾロは困ったように眉をひそめてぽつりと呟いた。
「満月は嫌いなんだ。」
「なにそれ?」
思い掛けない言葉にナミは目を見開いた。
「・・・。」
言いたくなさそうにゾロはついと目を反らせた。
「私は満月好きよ。明るくて、昼間みたい。」
「・・・お前・・・こっちが嫌いって言ってるんだからちょっとは話合わすとかしねえのかよ?」
「なんで?あんたが満月嫌いなのなんて知った事じゃないわ。私は好きなの。あんたはなんで?」
ゾロはしょうがねえというように話し出した。

 


「・・・よくこいつと一晩中打ち合ってたもんだ。・・・今でも思い出す。」

 


ゾロは腰につけた白い刀をそっと触った。


ナミもそれに目を落とす。


「・・・情けねえからあんまりお前に言いたくなかったんだよ。」

頭をがしがしとタオルでこすりながらゾロが言った。
「・・・まあ、よしとするわ。あーあ。私まで満月嫌いになりそう。」
ナミの言葉に疑問の念が浮かぶ。
「なんでだ?お前、関係ないだろ?」
「だって。これから満月見る度に、二人で仲良く修行に励んでる姿を思い浮かべちゃうのよ。あー、考えただけでもむかつく。」
腕をぶんぶんと振り回しながらナミはいやいやと頭を振った。
その様子に思わず笑みがこぼれる。
「なんだ?焼きもちか?」
「うぬぼれないで。ばーか。」
鼻を指でぴんと弾いて 、ナミはさっさと部屋に向かって歩き出した。

 


「ちょっと。」
それを見送っていると、ふいにくるりと振り向いてゾロに呼び掛ける。
「何してんの?さっさとシャワー浴びてよ。あんたのせいでむかついてんのよ。部屋にいるから謝りに来なさいよ。」
それだけ言って勢いよく扉を閉めて部屋に戻って行った。

 


ゾロは照れくさそうに頭をかきながらナミの後を追うように船の中へ入って行った。

 

 

 

ゾロ祭り第四弾!
月見してないじゃん!がーん!
くいな・・・さりげに登場・・・?
この後は謝りにいったんですよ。はい。