睡眠薬

 

どんな寝心地かと言われたらそれは言葉にするのは難しく、かといって説明できないかと言ったらそうでもなく。


ただ一つ言えるのは・・・

 

 

ナミは今日も空を見ていた。
グランドラインに入ってから心配なのだろうか、夜、錨を下げて、誰かが見張りに立っている時でも必ず起きだして空を見上げる。
クルー達が心配してゆっくり休むように言ってはいるが頑固なナミはそれを聞こうとしない。
・・・目はうっすらと赤く、目の下の白い皮膚は微かに澱んでいると言うのに。

 


「このままじゃナミさん倒れちまうなあ・・・。」
ぽつりとサンジが言った。
「でもよう、俺らじゃ役に立たねえしなあ。」
「それにしたって、限界だろうが。ああ、クソ!何もできねえ自分が歯がゆい!!」
包丁を振り回しながら叫ぶサンジにそこにいたウソップもチョッパーもびくびくと見守るしかなかった。
「どうせなら一服盛る?」
さらりとロビンが物騒な事を言った。
「おおおおおおお俺の薬はやらねえぞ!」
チョッパーがささと薬の入ったバックをロビンから隠す。
「俺もそんな事したら後でナミに殺されるから嫌だぞ!!」
ウソップも首がとれん勢いで首を降った。
「でもなあ・・・無理矢理にでも寝てもらえないとなあ・・・。」
「そうね。コックさんが最適かもね。」
「いや!しかし!俺が作った料理に異物を加えるなど料理人魂に反する!・・・ああ!おれはどうすればいいんですか!ナミさーん!!」
どうもすんなよ!と心で突っ込みを入れながらウソップとチョッパーは自分の作業に戻った。
「あら、いい方法があるわよ。」
ロビンがにこやかに笑った。

 

 

空は快晴で風一つない。一見問題なさそうな気候だが、グランドラインは何があるか分からない。ナミはふうとため息をついた。
「おい、ナミ。」
どこからか名前を呼ばれ、ナミはきょろきょろと辺りを見回した。
「おい。」
顔をあげると蜜柑畑から手招きしている手が見える。
階段をあがって行くと案の定、そこには蜜柑の根を枕にゾロが寝そべっていた。
「何?呼んだ?」
「いや、何してんのかと思ってよ。」
「何って・・・空見てたの。前みたいに嵐に突っ込むのも嫌だし。」
「へえ。」
さして興味ない様子のゾロに寝不足も手伝って無性に腹が立ったようだ。
「用がないなら行くわ。」
そう言って立ち去ろうとすると急に視界が揺れ、背中に暖かい感触が広がる。
どうやらゾロが自分を腕の中に引き寄せたと気付くのに少し時間がかかった。
「ちょっと!何すんの!」
振り向いて一発殴ろうと思った腕ごと抱え込まれて、ナミはすっぽりとゾロに抱えられてしまった。
「ちょちょちょっと!!何してんのよ!」
慣れた感触がじわりと身体に広がる。と、言ってもここは外。いつもの女部屋のようにふるまう訳にも行かない。
「ああ、寝っ転がってだって空は見れるだろ。」
喋る度に動く筋肉にあらためて自分がゾロの腕の中にいる事を自覚させられたようだ。
「でで、でも!こっち向いてたら見えないじゃない!」
確かに。とゾロは言って、ちょうど自分の脇になるようにナミの身体を反転させた。
いつもいつも女部屋でしてくれる腕枕の感触に自然とナミの緊張も解ける。
「見えるか?」
「・・うん・・・。」
確かに、寝っ転がってだって見れるわよ。と口でぷつぷつ言うナミの喉元に腕を回すと、その熱が心地よいのかナミは少しうっとりとした表情でゾロに身を預けてきた。
「いい天気ね・・・・。」
「ああ・・・。」
伝わる熱と心臓の音がナミの耳に、頬に心地よく伝わる。
お日さまの香りとゾロの香りが身体にしみ込んでくる。
いつしかナミは空を見る事なくすうすうと眠りについた。
ゾロはそれを確認すると、空に向かってひらひらと手を振った。

 


「航海士さん、眠ったみたい。」
「へー、すげえなーゾロ。どうやったんだろう。俺の薬よりも効くのかー。」
ほへえ、と感心するチョッパーにロビンはにこやかに答えた。


「そうねえ、誰が作った薬もかなわないかもね。『愛情』っていう薬にはね。」


がつんと何かをサンジが叩き割る音も、それをあわあわとなだめるウソップの声も夢の中にいる二人には届かなかった。

 


それは羽根布団よりも軽やかで、包まれる心地よさは日の光よりも暖かで、自分だけに与えられる最高の寝心地だと・・・。

 

 

ゾロナミ飢え中。ゾロナミーゾロナミはいねえがーーー。うろうろ。
自給自足。らーぶらーぶ。というかまったり。ほら、安心すると子どもって寝るじゃん(予想)その勢いで。よーしよーし、さー、お眠りー。くかーーーーー。みたいな。
ああ、自給自足だ。ゾロナミーゾロナミは(以下同文)