「あっっっっっっんたたちはあ!!!!!」


甲板の端で大きな音がした。
どうやらナミがルフィを殴りつけたらしい。
「うをーー!なんだよ。ナミ。」
ルフィは殴られても度どこ吹く風で、衝撃で飛んだ帽子をさっとかぶり治す。
ナミは肩で息をしながらルフィを睨み付けている。柱の陰ではチョッパーとウソップがびくびくと震えている。
どうやら今回は全員に怒りの鉾先が向けられているようだ。


サンジは何事かとキッチンから顔を出す。ロビンは我関せずと言った様子だ。


「いつもいつもいつも・・・!」


何に怒っているのか分からないままルフィがナミにたこ殴りにされている。
「ナ・・・ナミさんどうしたんですか!!??」
余りの事にサンジが飛び出す。ナミが怒るのはよくある事だが、だいたいは一発殴って終わる。ヒステリーを起こしているのか言っている事もよく分からない。
「ナミさん、落ち着いて。ね。午後のお茶にでもしましょう。ね。」
冷や汗をかきながらサンジがなだめに入る。
「お茶・・・?お茶ですって・・・!」
ナミが不穏な空気をまといながらサンジを睨み付ける。
びくりと後ずさるがナミは容赦なくサンジを踏み付けた。
「この!この!何がお茶よ!馬鹿ーーーー!」
「ああ!ナミさん!そんなナミさんも好きだー!!」
訳の分からない状況でもナミへの愛を囁くサンジに、誰もが同情を隠し切れなかった。


「まったくどうしちゃったのかしらねえ、航海士さん。」
ロビンはいつの間にか蜜柑畑で寝ていたゾロの頭をつついた。
「俺に聞くなよ・・・。なんだってんだ。」
それをうっとうしそうに払いながらゾロはのっそりと身体を起こした。
甲板ではきいきいとナミが怒りをぶちまけている。
ゾロはあれか?と指差すとロビンはゆっくりとうなずいた。
「しょうがねえなあ。」
ぽつりと呟き、ナミの元へと歩いていく。


「おお!ゾロ。ナミが訳わかんねえんだ。」
ルフィがほとほと困ったと言う顔をしてゾロに声をかけた。


「ナミ。」
ゾロは声をかけるとナミが振り返る間もなくその腕の中に抱き締めた。
「・・・!」
驚いたのは踏み付けられていたサンジで、抗議しようとしたその口はハナハナの力で塞がれた。


「どうした?ん?」
ぽんぽんとなだめるように背中を叩くとナミはぽろっと涙をひと粒こぼした。
「・・・・・・。」
「ん?」
小声で喋る声を聞こうと耳を近付ける。
「・・・だもん!」
「ん?」
「だって・・・・!皆自分勝手なんだもん!!」
ナミの言葉にクルーの全員がはっとした。


「ルフィはつまみ食いばかりするし!・・・ここじゃいつ次の島につくかわかんないのよ!食料が重要だって事わかってないのよ!!」
「・・・。」
ルフィがうつむいた。
「こっちは必死に航路見てるって言うのに皆自分の事ばっかりで替わってくれないし!・・・そりゃ替わるのは無理かも知れないけどさ・・・それにしたってもっと協力的だっていいじゃない!」
ナミからはぽろぽろと涙がこぼれ、ゾロのシャツを濡らしていく。


それぞれが思い当たる節があるらしく眉をひそめた。
「悪い・・・。」
「ごめん・・・。」
「すみません、ナミさん。」
「悪かったな・・・。」
「ごめんなさいね。」
「悪い。」
それぞれにナミの肩を撫でたり頭を撫でたりと、なんとかナミの機嫌を治そうと必死だった。


それがナミに通じたのか、泣き腫らした顔をゾロの胸から上げた。
「・・・もういいわよ。」
そう言うとまたぽとっとゾロの胸に顔を落とす。


「ナミさん、今日はもう休んで下さい。後は俺らがやりますから。さ、顔を上げて下さい。」


ナミはしっかとゾロにしがみついたままだ。
サンジは青筋を浮かべながらゾロを睨み付けた。


ナミに声をかけるがそこから動こうとしない。それどころかぐいぐいとゾロを押して倉庫のほうへいこうとする。


「おいナミ。」
「うっさい!部屋までこのままでいなさい!!」


ナミの言葉にゾロははーん。と怪しげな笑みを浮かべた。


「お前・・・泣き顔見られたくないんだろう。」


ゾロの言葉にナミは耳まで真っ赤になった。
「うううううううるさい!どうでもいいでしょ!そんなこと!!!」
なおもぐいぐいと身体度ごと押してくるナミを軽く抱き締め、あっけにとられているクルー達に軽く手を振った。
「そういうわけだ。後よろしく。」


さらりと言い放った言葉にサンジの怒りが爆発した事は言うまでもない。

 

涙・・・・・・・・です。この後は言わずもがな。私の中ですでにお父さんポジションを獲得しているゾロです。主婦サンジ。大蔵省ナミ。へいへいほー。