いつか見る未来

 

「こんなものしかないが・・・。」
そういってコーザはビビに水の入った器を差し出した。
ここはユバの街。あの動乱を乗り越え徐々に復興してきた水の都だ。
ビビは父とともに視察の名目でコーザの元をたずねてきたのだった。
「充分よ。・・・嬉しいわ。ここで取れた水なのね。」
ビビは透明な水の入った器を感慨深げに眺めた。
街はビビたちの予想を超えた速さで成長していて、すでに見慣れない服を着た人々がこれまた聞きなれない言葉を発しながら商品を売っている。
「すごいわね。」
「ああ、もとから経済の中心地になるはずの街だったんだ。少し手を加えるだけでどんどん人が集まってくる。今はまだまだだが、きっといい街になる。」
コーザはその様子を窓越しに眺めながら誇らしげに言った。
「そうね。リーダーの・・・みんなのお陰ね。」
「もとはといえばお前のお陰だ。・・・っと、時期女王様にこれは失礼を。」
「やだ!なに言ってるのよ!まだまだ先の話じゃない!」
頬を赤くしてビビは腕をぶんぶんと振り回した。
この気さくさが民衆をひきつけて止まないことをまだ彼女は知らない。
そうこうしているうちに国王であるコブラが戻ってきた。
街の様子に至極満足げな顔をしていることにコーザはほっと胸をなで下ろした。
「見させてもらったよ。短期間でよくここまでやってくれた。」
「ありがとうございます!」
「・・・ただ言うなれば急激な成長は後に悲劇を招きやすい。周りの部族ともよく話し合いをして争い事のないよう頼むぞ。」
「はい!それはもう、重々肝に命じております!」
国王は暖かく微笑み、ビビの隣の椅子に座った。
「まあ、堅苦しいのはここまでにしよう。」
「は・・・はい。」
その様子にビビは笑った。どうやらコーザが畏まっているのがおかしいようだ。
「ビビもたまにはこちらに顔を出すといい。お前の顔をみたら皆のやる気が出る。」
その言葉にビビの顔が輝いた。一瞬コーザをみて目を伏せる。
コーザも嬉しそうに口が歪んでいる。
「・・・ふむ。」
コブラは面白くなさそうに眉をひそめた。
「ところで、ビビ。きいたかね?」
「え?」
「ペルが戻って来たのだよ。海向こうに外交にいっていただろう。いい結果を持ってきたそうだ。」
「本当!?ああ、すばらしいわ!一人でいってしまったから心配してたの!」
コブラはコーザの様子を見ながら話を続けた。
「そうだな、これからは平和的に事をすすめる事が何よりだ。ペルは今回の件でその事を証明してくれた。『将来』が楽しみだ。」
その言葉にコーザの顔がさっと青ざめたのが分かり、コブラは目を細めた。
「さあ、ビビ。戻ろうか。彼の祝賀会を開こうではないか。」
「そうね。・・・コーザ。また来るわ。」
「ま・・・待って下さい!」
部屋を出ていこうとする二人をコーザは呼び止めた。
「国王・・・お・・・俺、必ずこの街をいい街にしてみせます!必ずです!」
ビビはいわれた意味が分からずきょとんとしていた。
「それは嬉しい。頑張りたまえ!私も古いしきたりにはこだわらない方だ。さ、行こうか。」
コブラはきょとんとするビビの背中を押して部屋を出ていった。
見えなくなった背中にコーザは決意を秘めた目で見送った。

 

 

サブタイトル「娘を幸せに出来ないやつとの結婚は許さん」