Happy Christma

 

今年はどこかおかしかった。


もう20日も過ぎたというのに誰もクリスマスの準備をしないのだ。

「しょうがないなあ。みんな。」
俺はいそいそと薬箱の奥の奥にしまっておいて大きな銀色のオーナメントを取り出した。
毎年ナミのみかんの木を里リースに見立てて飾りつけをして、てっぺんに星をつけるのが俺の役目。
今年はきっと忘れてるんだ。俺がリーダーにならないといけないんだ。
小さな責任感を胸に蜜柑畑へ向かった。
天気がいい日はナミは大抵そこにいる。だけど今日はロビンしかいなかった。
「あら?どうしたの?」
さらりと黒い髪を揺らしてこっちをみてくる。
そうか、ロビンはまだ船に乗ったばかりで知らないんだ。
俺は手に持った星のオーナメントをずいとロビンに突き付けた。
「クリスマスの準備をするんだ。手伝ってくれよ。」
そういうとロビンはぱちぱちと目を瞬かせたあと、にっこりと笑った。
「あら?聞いてないの?今年はクリスマスは25日までお預けよ。」
ロビンの言葉に今度はこっちが驚いた。
「な・・・なんでだよ!クリスマスだぞ!ケーキにターキーにプレゼントだぞ!
俺、先月から皆のために準備して・・・・!」
最後は喉が詰まって声が出なかった。
どうして?みんな毎年楽しみにしてたじゃないか。
「あのね・・・。」
ロビンが困ったような顔をして俺の目線に合わせてしゃがみ込んでくれた。
「本当は秘密にしててって言われてたんだけど・・・今年はチョッパーの誕生日とクリスマスをわける事にしたんですって。」
「え・・・?」
「毎年クリスマスと一緒にお祝だから可哀想だし。って。」
その言葉に俺は再度驚いた。
「ほ・・・本当か!俺の誕生日だけか?」
「そうよ。もちろんプレゼントも別よ。」
「本当か!うわああ!」
俺の喜んでいる姿をみてロビンもほっとしたように微笑んだ。
私から言った事は内緒ね。と二人だけの秘密の約束もした。


うわあ、うわあ、楽しみだ。そういえばいつもクリスマスと一緒だったな。
プレゼントも別にもらえるのか。皆、俺の事だけ祝ってくれるのか。
後から後から楽しい考えが浮かんできて知らずのうちに笑みがこぼれる。
皆そんな様子を見て、小さなため息とともに肩をすくめた。
部屋に戻った俺はオーナメントを元の場所にしまった。
今年は25日だけの出番なんだぞ。
ぽんぽんと叩いて箱の扉を閉めた。数日後、俺達は陸地についた。
皆買い出しに大忙しだったが俺は一応主賓らしく、特に用事も頼まれなかったので一人甲板でぼおっとしてた。
ふふ、みんな何をくれるんだろうな。俺だけのプレゼントだからクリスマスみたいにお返しをしなくてもいいんだ。
考えるだけで笑いが込み上げる。
じっとしてるのも落ち着かないのでロビンを誘って街に出る事にした。
街はクリスマス一色だった。
赤に緑、あちこちにリースやツリーが飾られ、プレゼントを買う人の群れで前にも進めない状態だ。あちこちから美味しい匂いとクリスマスを祝う言葉が聞こえる。
「結構賑やかな街ね。」
「そうだね。」
街の中心には大きな大きなツリーが飾られていた。この街のシンボルらしい。
「大きい・・・それに立派ね。」
木には町中の人が飾っていったであろうオーナメントやクッキーの数々、雪に見立てて綿もあしらってあった。夜になれば明かりが灯るのだろう、ぽつぽつとランプも吊るされていた。
「でも、うちの船の方が立派だぞ!ナミの蜜柑の木をツリーにするんだ!飾りはみんなでやるんだぞ!それで最後には俺がてっぺんに星を飾るんだ!」
「そうなの。明日が楽しみね。」
嬉しそうにロビンは笑った。
本当だぞ!すごいんだぞ!ああ、早く見せてやりたいな。

 

船に戻るとまだ誰も帰っていなかった。
二日も続けてパーティなんだからきっと買い出しに手間取っているんだ。
ふと見上げると灰色の空をバックにナミの蜜柑の木があった。
緑色だけの葉っぱがゆらゆらと揺れている。
ああ、去年は一ヶ月もまえから飾り付けてたもんな。
そんな事をふと思い出す。
ゾロの誕生日が終わった辺りから少しずつ準備して、当日になっても終わらなくて。
でも今年は一日しか飾らないんだ。
いや、それよりも間に合うだろうか。街で見たあのツリーよりも素敵に飾り付けられるだろうか。
だんだん心配になってきて倉庫の飾りを見に行った。
すぐ取りだせる場所に置かれてはいたが中身は去年しまったまんまだ。
もしかしたら壊れてるのもあるかも知れない。
ああ、早くみんな帰ってこないだろうか。ウソップだけでも来てくれたら一緒に確認するんだけど・・・。そうこうしているうちにみんな戻ってきた。でも、誰もクリスマスの準備をする
余裕はないらしく、ばたばたと船内を走り回っていた。
自分の誕生日の準備をしているからしょうがないとは思うが、その後に控えているクリスマスの準備の事を思うとどうにも落ち着かない気持ちになってしまった。
そんな俺を落ち着かせるように時折ロビンが頭を撫でてくれる。
大丈夫よ。とでも言いたいのかにっこりと微笑んでくれる。
違うんだよ。俺は・・・。
そう言いかけてはっと口を押さえた。
みんな俺のために一生懸命やってくれてるのにそんな事言ったら水を差してしまう。
そう考えて、せめて少しでも早くクリスマスをやるために薬箱にしまってあった
オーナメントをそっとズボンに隠し持った。

 

「誕生日おめでとーーーーーー!」
クラッカーが一斉に鳴り、色とりどりの色紙が頭の上から振ってくる。
「さ、チョッパーろうそくを消して」
ナミに促され、目の前に現れたケーキを見る。
サンジが一生懸命作ってくれたケーキだ。俺の名前「だけ」が書いてある。

・・・でも、砂糖菓子のサンタもトナカイも乗ってはいなかった。

「どうしたの?」
「ん?ううん?なんでもないよ!!」
俺は大きく息をすって一気にろうそくを拭き消した。
「おめでとーーーー!」
みんなが拍手してくれる。俺だけの誕生日なんだから俺だけに拍手をしてくれる。

でも、いつもなら壁にかけてあるリースも、キッチンを飾るモールもそこにはなかった。

「おら!冷めないうちに食え!!」
サンジが大皿にもった料理を出してくれた。

・・・でもターキーじゃなかった。

しゅんとした俺にナミが心配そうに声をかけてきた。
「どうしたの?嬉しくないの?」
その言葉に皆はっとして俺を見る。
だめだ!皆、俺のために祝ってくれたんだから嬉しくしないと!
「あ・・・そんなことないよ・・・!」
そうだ、これが終わればクリスマスなんだし、別に・・・。
その時、ふわっと身体が浮いて俺はロビンの膝の上に座らされた。
「正直に言ったら?」
額にロビンの髪の毛がかかる。くすぐったさと申し訳なさが入り交じって目頭が熱くなった。
「ロビン?」
「彼ね、寂しいお誕生日は嫌なんですって。いつもみたいにクリスマスの雰囲気の中祝って欲しかったみたいよ。」
皆の表情が止まる。
当然だ。せっかく俺のために用意してくれたのに俺・・・・。
それにロビンもひどいや。言わなくたっていいじゃないか・・・!
小さな身体をもっと小さくしてこのまま消えてしまいたかった。
「行くぞ。ウソップ。」
ゾロが壁にかけてあったコートを着て外に出ようとしている。
サンジもため息をついて出したばかりの料理をしまいはじめた。
その様子に俺は愕然としてしまった。
きっと皆を怒らせたんだ。
せっかく用意してもらったのに・・・・俺・・・・。
ぼろりと涙がこぼれそうになった。

もう喉が詰まって声なんか出やしない。
謝りたいのに
謝りたいのに
謝りたいのに

「何やってるの?チョッパー。ほら、早くいかないと。」
ナミの言葉にはっと我に帰る。
「それならそうとさっさと言ってよね!ほら、ゾロ達外で飾り付けしてるから手
伝ってきて!私達はクリスマスの料理を作るから。」
はっとロビンを見るとにっこり微笑んでいる。
ズボンに隠しもってたオーナメントをつんと指でつついて「楽しみにしてるわ。」と言ってくれた。
「いっとくけど、プレゼントは一つだからね?いーい?」
ナミがウィンクを交えてそう言った。
俺は首が落ちるんじゃないかと思う程に首を縦に振った。
着るものもそこそこに外に出ると、みんな総出でみかんの木を飾っていた。
「おっせーぞ!ちょっぱー!」
ルフィが見張り台から叫ぶ。モールはもうそこらに飾り付けられていて、緑色だけだった蜜柑の木が色とりどりに光っていた。
「おら、仕上げ」
ゾロが木のてっぺんを指差す。
そうだ!クリスマスの飾りの仕上げは俺がやらなきゃ!
なんとかてっぺんによじ登って銀色のオーナメントを取り出す。
ピカピカに磨かれたそれは薬箱に入っていた時よりも嬉しそうで、まるで飾られるのを待っていたかのように輝いていた。
「なあ、みんなを呼んできてくれよ!」
そう叫ぶとウソップがナミ達を呼びにキッチンへと走った。見渡すと金銀のモール、緑と赤の飾り、ランプはいくつも光を放って、まるで夢の中にいるようだった。
「おーい。呼んできたぞー!」
皆が揃ったところで、木のてっぺんにそっとオーナメントを置く。
それを待ちかねたようにクラッカーが鳴った。
皆、楽しそうに笑って、俺ももちろん笑って、
木から降りた俺はあらためてオーナメントを見上げる。
きらきらと光って、今日見たあのツリーよりも綺麗で、立派で、
「あなたの言った通りね。すごく素敵だわ。」
ロビンも笑った。
「だろ?だろ?そうだよ!俺の誕生日は・・・クリスマスはこうでなくっちゃ!!!」
精一杯ジャンプして、少しでもあの星に届くように、そして全ての人に・・・

Mary Christmas!!

 

rokiさんのちょぱ誕「RUMBLE BOMB!4」に
投稿した作品です。