MEN7

 

結局一日部屋で過ごした。
ゾロはずっと抱き締めてくれたし、キスをせがむと何回でもしてくれた。
それに不満な訳ではないけど、どこかまだ心の中に不安が残る。
何に対して不安なのかハッキリとは分からなかった。
どちらにしろ今日は街に出て刀を受け取って船へ戻ってみよう。
いつ出発するか決めなきゃいけない。
足りないものはまた買わなければいけないし、食料だってサンジ君と相談して・・・。


ふと、この間のサンジ君を思い出す。
どうしよう。サンジ君に会うのが怖い。
言い様のない不安がまた襲ってくる。
とにかく行動しなければ。私はゾロと一緒に部屋を出た。


刀はとうにとぎ終わっていて、ゾロが鞘から抜いて確認すると美しい輝きを放っていた。


ゾロは満足そうにそれを眺め終えると機嫌よさそうに店を出た。
「やっぱり刀がないとな。」
誰にいうでもなくそう呟いたゾロは少年のように笑った。


「お。ナミーーー!!」
ゴーイングメリー号からルフィの声が聞こえる。
大分修理は終わったらしく、ウソップが壁に絵を描いていた。
「見ろ!この芸術を!!今度ぶちこわしやがったらただじゃおかねえぞ。」
ポーズを決めて自作の絵を自画自賛する。
「なんだー?もっと色あった方がい
だろ。」
そう言ってルフィが上からまっかな絵の具を絵の具を塗り、芸術はより芸術らしくなった。
「なにすんだ!ルフィー−−!」
怒ったウソップが腕を振り回しながら怒る横からサンジ君が顔を出した。


心臓が跳ねる。


「あ、ナミさん!・・・と、またお前か。」
「悪いかよ。」
前のような険悪な雰囲気ではないのでほっとした。
「そろそろ出発の日にち決めようかと思って。船の修理はどう?」
「ばっちりだ!」
ウソップが親指を立てる。
「後はルフィが壊しさえしなければ...。」
「あ。」
間の抜けたルフィの声と大きな音がしてウソップは慌てて駆けて行った。
「・・・もう少し出発は伸ばしましょうか。・・・と・・・サンジ君は・・・。」
いつの間にかサンジ君の姿が見えない。
「あいつならキッチンに行ったぜ。」
「そう。」
次の街までまだ結構ある。食料の相談をしようとキッチンへ向かった。


扉の前まで来て急に緊張してきた。


キッチンにはサンジ君しかいないのかしら?


一度深呼吸をして扉を開ける。
中をのぞくとサンジ君が忙しそうにキッチンにいた。
「あ、ナミさん。」
「ごはんの支度?」
扉はあけたままでサンジ君に問う。
「ああ、仕込みですよ。時間のかかるものは先にやってしまわないと。」
そういって一抱えもある鍋を火にかける。
「もう出発しますか?」
いつもと変わらないサンジ君にほっとして、話を続ける。
「そうね、そろそろ。それで、次の街まで結構あるからどれくらい食料がいるか相談しようと思って。」
「あ、そうですか。次の街までどれくらいですか?」
「そうね。大体一週間ぐらいってところかしら。」
「・・・一週間か・・・肉が・・・10・・・いや・・・20か?その前に野菜か。」
サンジ君は考え事をしながら仕込みを続ける。
野菜を取り出し、慣れた手付きでそれを切る。
「お任せするわ。」
話がそこで途切れてしまったので居心地が悪く、立ったまま時間を持て余していた。
「ナミさん。」
急に呼び掛けられ、どきりとする。
「そんなに警戒しないで下さいよ。こっちがまいっちまう。」


サンジ君の言葉にまたあの不安が襲ってくる。


野菜を切る手は止まらない。いままで何度もやってきたように機械的に動いて行く。
「まあ・・・するなって言う方が無理かも知れないですけど。・・・でもどうしても俺の気持ちを伝えておきたかったんですよ。」
サンジ君はまた野菜を取り出して切りはじめる。


「たまに思うんですよ。あなたが笑ってる横にいるのがどうして俺じゃないんだろうって。」


野菜を切る音だけがキッチンに響く。


私の鼓動のように速く、速く。


「あなたが俺を男と見てないってのは分かってたんです。そばにいるだけでいいって思ってたんです。・・・でも・・・我慢できなかった。」


不意に、音が止む。
私は何も言わず立ったままだった。


「・・・喋り過ぎました。」


サンジ君は切った野菜を鍋に放り込む。


「・・・こういうこと言うの失礼かも知れないけど・・・この間、初めてサンジ君が男だって思ったの・・・。」


なんとか声を絞り出し、沈黙をなくそうと喋った。


「・・・?それは嬉しいな。やっとそう見てくれたんですか。」


振り向いたサンジ君はどこか寂しげな顔で、私は胸が痛んだ。


「ううん。皆男だって。私は女で・・・どこかおいて行かれるような気がして・・・だから・・・。」


そういって今まで漠然と感じていた不安が見えてきたような気がした。
サンジ君は不思議そうな顔をしている。


「どうしてそんな事を?」


サンジ君は私に近付いてくる。


「どうして?」


優しく問いかけるサンジ君に恐怖は感じなかった。


「わからない。でも・・・男だったら・・・前みたいに特別に扱われる事もないし、皆と一緒にいられると思ったの・・・。」


私の言葉にサンジ君は納得したような顔をした。


「・・・ナミさん・・・。」


そういってサンジ君は私を抱き締めた。ひどく遠慮がちに抱き締められたのでどうしたらいいのかわからなかった。


「そんなこと思ってたんですか?確かに俺達は男であなたは女性だ。男性が女性を守るのは当然だし、それを恥じる事もないんですよ。それにあなたをただの女性とでしか見てないなら、はなから船には乗せてませんよ。」


耳もとで聞こえる声は心地よく私の心にしみる。


「あなたは仲間で、女性だ。それ以上でもそれ以下でもない。そんなことを考えないで堂々としていたらいい。自分を卑下するなんてあなたらしくない。」


すうっと何かが抜けたような気がした。


「ありがとう・・・。」


涙とともに感謝の言葉が口から出る。


「お礼なんて・・・。」


サンジ君は軽く腕に力を込める。


「ごめん。なんかサンジ君に甘えてる。」

「もっと甘えて下さいよ。あいつはこんな事言ってくれないでしょう?俺の言葉であなたが笑ってくれるならそれだけで満足ですよ。都合のいい男でいいんです。俺は。」


私はサンジ君の背中に軽く手を回した。
ごめんなさい。もう少しだけ甘えさせて。


「・・・本当は嘘ですけどね。俺があなたの事をどういう風に思ってるか分かったら多分軽蔑するでしょうね。」
「・・・。」


でもサンジ君からは離れなかった。ゾロとは違う暖かさがその時は心地よかった。


「でも、こうしてあなたを抱き締めてるからよしとしますよ。・・・でもこれだけは覚えておいて下さい。俺達は形は違っても皆あなたの事が大好きだ。いつも自信満々で、揺るぎない信念をもっているあなたが。その笑顔のためなら俺達はなんだってする。」


その言葉で十分だった。悩む事はもう何もない。


「・・・そうね。取りあえず私を抱き締めたって事で50万ベリーってとこかしら?」
「あ、やばいなあ。俺、金ないんですよ。」
ぱっとサンジ君が降参ポーズを取る。
「貸しにしておくわ。利子は・・・そうねえ、毎日のデザートをスペシャルにしてもらおうかしら?」
「おやすいご用です。お姫さま。」
やや、仰々しくおじぎをするサンジ君の顔は晴れ晴れとしていた。
多分自分もそういう顔をしていると思ってなんだか笑いが込み上げる。

 


結局出発は二日後だった。
ウソップが直したそばからルフィが壊すので修理に時間がかかってしまった。
食料も十分に積み込み、あとは帆を張るだけだ。
「おーーーーいナミ−ー!どっちに行くんだ−?」
キャプテンの元気な声が聞こえる。


私は私ができる事をすればいい。


私は海の方を指差し叫んだ。
「面かじいっぱい。南へ一直線よ。」
「おう!」
男たちの威勢のいい声が船内に響く。
私はそれを指示して、デッキの椅子に深く座る。
その様子にサンジ君が親指を立ててウィンクする。


さて、この可愛い船員達を無事にグランドラインに連れて行かなきゃね。


青々と澄み切った空にそう呟いた。

 

お。なにげ完結。サナゾか!?なんて突っ込みはなしで!!
こんなにサンジを書いたのは初めてです。
美味しい役所だったような・・・。