MEN4

 

「はい。どうぞ。マリンブルーです。」
目の前に淡い色をした液体が入った小さなグラスが置かれる。バーテンダーは小気味よい音を響かせながら次のカクテルを作る。
「じゃあ、乾杯でも。」
「あら、何に?」
「そうですね・・・あなたの美しさにでも。」
「ふふ、口の上手いコックさんに乾杯。」
グラスからは澄んだ音が出た。
甘い味が口の中に広がる。
「どうですか?」
サンジ君がにっこりと微笑む。
「おいしいわ。」
「それはよかった。」
眩しくなるような笑顔でサンジ君が自分のカクテルを一口飲む。
いつもは襟に隠れて見えないのど仏が動く。
私はそれにどこか違和感を感じていた。
「ルフィたちとは別行動?」
そんな考えを気取られなくて話し掛ける。
「あいつらと一緒にいたらお金がいくらあってもありませんよ。やれ、肉を買え、卵を買え、ってね。」
「そうよね。確かにそうだわ。」
「でしょ?ただでさえ毎日の食事の配分にも事欠くっていうのにこれ以上面倒見切れませんよ。」
サンジ君は両手を軽くあげ、降参のポーズをとった。
「で?どう?今回はいい食材あった?」
「そりゃあもう!今日は下見ですよ。最後の日にまとめて新鮮な食材を買い込みます。ああ、早くあの材料を使ってナミさんにお食事を作ってさしあげたい!」
「ありがとう。サンジ君の料理はいつも美味しいわ。食べ過ぎて太っちゃいそう。」
「ナミさんはスリムですよ。それより解せないのはあんなに食ってるルフィはどうして太らないのか・・・。」
サンジ君の目がキラリと光る。どうやらサンジ君にとって、ルフィはもしものための食料に分類されているらしい。
「サンジ君もスリムよね。」


何気なく言った言葉にサンジ君が強い反応を示す。


「・・・あの剣豪よりってことですか?」
その言葉にどきりとする。どうしてだろう、今日のサンジ君はいつもと違う気がする。
「見た目よ見た目。いつも細みのスーツ着てるじゃない?」
「実はこっそり筋肉質なんです。見ます?」
襟に手をかけ、サンジ君がついと近寄る。
煙草とコロンの匂いがかすかに香る。
「遠慮しておくわ。」
いつもの通りにっこり微笑んでサンジ君をかわす・・・はずだった。


いつもなら、大袈裟に残念がって諦めるサンジ君が私を見つめたまま目をそらさない。


「確かめて下さいよ。あいつと比べてどうか。」


その目はいつになく真剣で、私は動く事も目をそらす事もできなかった。


ゾロのように、力で動けなくするのでも、無理矢理キスをして私を黙らせるわけでもなく、ただ見つめるだけ。


私は全身に汗がにじみ出てくるのがはっきりと分かった。
無理に呼吸を整えようとするとかえって息苦しくなる。
背後から得体の知れない間のが忍び寄ってくるようなこの感覚は何?
どうしてサンジ君にそう思うの?


サンジ君はまだ私を見つめている。


何か言って。冗談だって。いつものように笑ってよ!!
頭の中でくり返される言葉。


それが聞こえたかどうか分からないがサンジ君は私から目をそらし、グラスに残った酒を一気にあおった。
私はまだ肩を強ばらせていた。


今のはなんだったの?


自分でも訳が分からない感覚に困惑していた。
「ナミさん。」
急に呼び掛けられ、肩がビクッと震える。
「もう出ましょうか。ホテルまで送りますよ。」
サンジ君の言葉に肩の力が抜けた。同時に、サンジ君に対してこんな態度をとってしまった事を申し訳なく思った。

 

続く

マリンブルーの胸騒ぎとーーー。
古いって。