いと小さき君のために

 

 

ゾロは女部屋の前で立ち止まった。
ナミの顔を見るのは本当に久しぶりだ。
見舞いにも来ないと怒っているだろうか。
そんな事を考えながらゾロは扉を開けた。
中は薄暗く、少し薬の匂いがした。
ゾロはゆっくりと階段をおりる。ナミの寝ているベッドの脇まできて、彼は驚いた。
寝ているナミははた目にも分かるぐらい痩せていた。顔は青白く、息も荒い。病人特有のはかなさにゾロは言葉が出なかった。
「・・・ん・・・?」
ナミがゆっくりと目を開けた。ゾロの姿を見て目を大きく開く。
「・・・ゾロ・・・。」
口はかすかに動き、来てくれたの?と形作った。
「ああ・・・、あの・・・島が見えたんだ。・・・だから・・・知らせに・・・。」
ゾロはうろたえていた。ナミの様子に少なからずショックを受けたようだ。
パニックしているのが自分でも分かる。どう接していいのか分からなかった。
「ゾロ・・・私大丈夫だから・・・。」
そう言ってナミは身を起こそうとした。
慌ててそれをゾロが制す。
「寝てろ。分かったから。」
ナミの目にみるみる涙が溜まる。
「ご・・・めんなさい・・・。心配かけて・・・。」
ナミは泣いた。
自分のせいでゾロに心配をかけている。こんな病気にならなければ皆に心配させることはなかったのに。
いままで我慢していたものが一気に吹き出たようにナミは涙が止まらなかった。
「もういい。大丈夫だ。島が見えたんだ。きっとよくなる。」
ゾロの声もかすかに震えていた。
どうしてナミを安心させてやれないのか、自分のわがままで見舞いにも来ず、果てはナミにいらぬ気苦労をかけさせ、ゾロは自分に腹を立てた。
ゾロはナミの頬をつたう涙を手で撫でた。
ナミの潤んだ目がゾロを見る。
「よくなる。大丈夫だ。」
ゾロはなるべくナミを安心させようと優しく語りかけた。
ナミもそれにほっとしたのか笑顔を見せた。
「・・・うん・・・。」
ゾロは軽くナミにキスをして女部屋を後にした。

 


倉庫を出るとサンジが煙草をふかして立っていた。
「おーお。目エ潤ませやがってよ。」
「っせーな!」
「まあ、いいさ。おら、島が見えてきたぜ。どうやら無人島ではなさそうだ。」
サンジはかすかに見える島陰を指差した。
「ま、俺らでナミさんを医者に連れて行くからてめえは船に残ってな。」
「ああ?」
「ナミさん見る度に泣かれちゃ、うぜえんだよ。」
サンジは白い空に煙りをはいた。
「・・・。」
「元気にして届けてやるよ。待ってな。」
髪で隠れて表情は見えないが、どこか寂しげにサンジは言った。
「・・・ああ・・・。」
ゾロもそれにうなづき、だんだんはっきりしてくる島に目を細めた。

 

終わり

男の人(当社調べ)は病院に行くのが嫌いです。
ましてや好きな人が入院すると驚いてあわあわします。
そういうのを書きたかったんでゾロナミ度は低め。
またサンジが痛い・・・・。