いと小さき君のために

 

 

「おい。進路は大丈夫か?」
サンジに言われ、見張り台でウソップがログポースを確認する。
「ああ、問題ねえ。」
「ビビちゃん、そろそろ島が見えて来てもいいころだよなあ。」
「そのはずなんですけど・・・。」
ビビは不安げに言う。
サンジは煙草を深く吸った。
「まじいな。」


ナミが熱を出してかなりたつ。ルフィ達のように体力が有り余ってるならどうって事はないがナミは普通の女性だ。
たとえ島がこの先あったとしてもそれまで間に合うかどうか。


サンジはいまいましげに煙草を揉み消した。
その様子にビビも慌てて海図を見る。
「ちょっとナミさんの様子を見て来るよ。」
「はい。」

 


女部屋の前まで来て、扉をたたく。
「ナミさん?」
声をかけても返事がない。入るとナミは寝ているようだ。

だが、苦しげな呼吸は変わらない。
サンジはそっとナミの額に手を置いた。手に伝わるその熱さにぎくりとする。
慌てて枕元の水でタオルを濡らし、ナミの額に置く。


心臓がいやに重く早く打つ。


考えたくない事が後から後から湧き出て来る。
そんなはずはない、いやでも。

 


目の前のナミは冷たいタオルで冷やされ、幾分楽になったのか表情が和らぐ。


しかし、それにさえひやりとさせられる。このまま逝ってしまうんじゃないかと。

 


ちくしょうちくしょうちくしょう

 


サンジは拳を強く握った。


なんでこの人に何もしてあげられないんだ。
身体だけでなく気持ちだけでも楽にしてあげたいのに。
出来るなら俺が変わってあげたいのに。
神と言うものが存在するならお願いだ。どうかこの人を苦しませないでくれ。


サンジは祈るように額に拳を当てた。


今のところナミを安心させられるのはゾロだけだ。百の言葉よりお前が姿を見せるだけでナミは満足するのに!


急に船が大きく揺れた。サンジはとっさにナミの寝ているベッドを宙に浮かす。
サンジはてっきり進む方向を間違えて座礁したのかと思い、怒りあらわに甲板に向かう。
みると船の上に見知らぬ人々。その様子に一瞬で状況を理解する。
ただでさえ気の立っている船員たちにとってそいつらを一掃するのにさして時間はかからなかった。


「おい、ナミは大丈夫か?」
最初に聞いて来たのはゾロだった。
「ああ、そうだルフィ、氷が切れたんだ。後ナミさんに持っていってくれ。」
「ほんとか!?よし!」
そういうと船の瓦礫をかき分け、氷のある甲板へ向かう。
「おい、クソ剣士、面かせ。」
サンジはゾロを顎でキッチンへと促した。

 


鈍い音がしてゾロが壁に背中をつく。
サンジに殴られて切れた口を手で乱暴に拭うとサンジを睨み返す。
「てめえ、どういうつもりだ!?なんでナミさんのところにいかねえ!?ナミさんが心配じゃねえかよ!」
その胸ぐらを掴み、あらん限りの声でゾロに言う。
ゾロは何も言わずサンジを見るだけだ。
「ナミさんはてめえを待ってんだよ!俺達じゃだめなんだよ!」
しぼりだすようなサンジの声がキッチンに響く。
「思い出すんだ。」
ゾロがやっと口を開いた。そっと白い刀に手を触れる。
「昔死んだ親友か?」
サンジが聞くととゾロはこくりとうなづいた。


以前ゾロから聞いた彼の親友。彼はその親友のために強くなる事を誓ったと言う。


「てめえは馬鹿だから言ってやる。」
掴んだシャツを離し、サンジはゾロを突き飛ばした。
「死んだ奴とナミさんを比べるな。いいか?ナミさんは死なねえ!死なせねえ!俺等がついていながらんなことさせるか!何もできねえって嘆いてる暇がありゃあ、さっさとナミさんに顔見せて元気づけやがれ!」
サンジの言葉にゾロはただうつむくだけだった。


「島だ!島が見えたぜ!」
見張り台の方からウソップの声がする。
二人の顔が一瞬和らぐ。これでナミを医者に見せてやれる。
「おら!いけ!ナミさんに報告してやれ。」
サンジはゾロの背中を蹴った。
「一番いい役ゆずってやるよ。これでもいかねえっつーなら俺も遠慮しねえぜ。」


ゾロはちらりとサンジを見るとナミのいる女部屋へと向かった。

 

 

続く

通勤時間一時間。J-PHONEはロングメールできる。
と、言うわけで電車でぴこぴこ打って送信という荒技に出ました。
電車では携帯切らないとね。うん。