美しい航海士へ捧ぐ(続)

 

「おい、ナミいい加減起きろよ。」
もう外は明るいというのにナミはベッドから出ようとしない。
布団からはみだした肩が明るい部屋の中でやけに白く感じる。
「ナミ?」
どこか具合でも悪いのかとベッドに浅く腰掛け、オレンジ色の頭を撫でる。
「・・・やだ。」
「あ?」
「もう!恥ずかしくて誰にも会えない!!だってゾロと・・・、あー!もう!」
夕べの事を思い出したのか真っ赤になってまた枕に顔を埋める。
「いいじゃねえか。どうせいつかは分かる事だし。」
「あんたはいいわよ!男なんだから!ああ!もう死にたい!」
ナミは耳まで赤くなっていていやいやと顔を振る。
それにどうする事も出来ず、ただ頭を撫でていた。
「・・・とにかく服着ろよ。また襲いたくなるだろ?」
そういうとナミの身体がぴくっと跳ねた。
「どうした?」
声をかけるとちらりとこちらを向く。
「・・・動けないのよ。」
「は?」
「動けないの!誰かさんのせいで!何よ!ぴんぴんしちゃって!」
そう言ってふて腐れたように頭から布団をかぶった。
「・・・ああ・・・悪いな。」
一応謝っては見たものの少々居心地が悪く、ぽりぽりと頭をかく。
「じゃあ、なんかサンジにもらってきてやるよ。」
「え!?やだ!あんたが行ったら冷やかされるだけじゃない!ダメ!」
立ち上がりかけたゾロの服の裾を掴み、抗議するナミをなだめるようにゾロは言葉を続けた。
「でもよ・・・このまま部屋にこもってたらいつまでやってんだ?って言われるんじゃねえか?」
「h・・・。」
ゾロの言葉にしぶしぶ従い、ナミは部屋で待つ事にした。

 


女部屋の扉を開けると朝だからか、少し肌寒い風が部屋に入ってきた。
あの恰好では風邪を引くと思い、慌てて女部屋の扉を閉める。
同時に倉庫に誰かが入ってきたようだ。
「あら、お目覚め?」
ニコがゾロに微笑みかけた。
「ああ・・・。」
少々恥ずかしくなり、目を逸らす。
「その様子じゃ航海士さんはまだ夢の中かしら?」
「いや、起きてる。恥ずかしいんだと。」
「ま、可愛い。」
ころころと笑うニコを後目に倉庫から出る。
通りすがりにぽんと肩をたたかれたような気がした。


「おーい。ゾローー。」
倉庫出ると見張り台にいたルフィが声をかけてきた。
「ナミはどうした?」
腕を伸ばし、バンジ−ジャンプのように上から落ちてくる。
「まだ寝てんのか?お前やりすぎたんじゃねえのか?」
「うるせえな。」
確かにそれもあるが・・・。
「もう俺ら飯食っちまったぜ。ナミの分は残ってるけどよ。」


サンジの奴。はなから俺に飯を食わせねえ気だな。


ちっと軽く舌打ちをして、キッチンへ向かおうとルフィに背中を向けた瞬間、ルフィが背中に平手を食らわせた。
「ぐは。」
予期していなかったのでもろに衝撃が来てしまい、ゾロはその場にひざをついた。
「何しやがる!」
「さあ?サンジがやれッて言ったからな。」
首をかしげるルフィを何度も振り返りながらキッチンの扉を開けた。
「お!ゾロ!」
目に入ったのはウソップだった。
「ナミは?」
「起きてる。なんか食い物くれ。」
「あーー、サンジがなんか用意してたなあ。サンジに聞けよ。今ミカン畑にいるぜ。」
「ああ、サンキュー。」
ウソップに背中を向けるとウソップもまた背中に平手を食らわせる。
「色男め!」
ウィンクしてみせるウソップにさっきのルフィの行動にも合点がいった。
さすがに恥ずかしくなり、そうそうにキッチンを出た。


ミカン畑ではかいがいしく木の世話をするサンジがいた。
サンジのナミに対する気持ちは知っていたので、この状況では声をかけるのに少し戸惑ってしまった。
「あ?なんだ色男。」
声をかけるより先にサンジに気付かれてしまい、ゾロは数歩歩み寄った。
「・・・食い物くれよ。」
「ナミさん用ならあるけどてめえのはねえぜ。」
「ナミにやるんだ。俺のはどうでもいい。」
そういうと無言で横を通り過ぎ、キッチンへと向かった。
その後を遅れてついていくと二つのプレートを持ったサンジがキッチンから顔を出した。
「おら。」
渡されたプレートを見るとどう見ても二人分以上ある。
「いいか?ナミさんのは綺麗に盛られたこっちだ。デザート付き。てめえのはこっちだ。間違えんなよ。食ったら洗っとけ。割るなよ。」
「サンジ。」
扉を閉めかけたサンジに声をかけると金色の髪を揺らして振り返った。
「サンキュー、悪いな。」
「けっ。やけに素直じゃねえか。いっとくけどナミさんを諦めたわけじゃねえからな!来年にはそのセリフてめえにそっくり返してやる!」
勢いよく扉が閉められ、ゾロはキッチンに目を残しつつ倉庫へ向かった。


倉庫の扉を脚で器用に開けていると後ろからチョッパーの声がした。
「ゾロ。ナミは大丈夫か?」
「ああ、多分な。」
「多分ってなんだ!やっぱり食っちまったのか!?」
がぼーんと顎を落とすチョッパーの様子からあいつらに何を吹き込まれたかなんとなく想像がついた。
「食ったけど大丈夫だ。」
「そ、そうか?そうなのか?じゃあ、これ。」
チョッパーの手には小さな袋が握られていた。
「栄養剤だ。サンジが「ナミさんはあのエロ剣士に食われて元気がなくなる」っていってたから・・・。」
サンジ・・・今回ばかりは頭が下がるぜ。
「渡しとく。」
そう言ってくるりとチョッパーに背中を向け・・・ふとルフィたちの様子を思い出す。
振り返ると案の定変型したチョッパーが俺に平手(蹄)を向けていた。
「ま、まて!チョッパー!」
俺の制止も効果なく倉庫に鈍い音が響いた。

 


「どうしたの?」
女部屋に入った俺の背中には無数のひずめの後がついていた。
サンジめ・・・チョッパーには念入りにいいやがったな・・・。
「なんでもねえ。ほら。」
トレイを差し出すとナミは怪訝そうな顔をしてそれを受け取った。
「・・・皆なんて?」
「・・・ああ、普通だ。お前が起きてこないから心配してたぜ。だから食って落ち着いたら顔出せ。」
「・・・うん・・・。」
やっと気持ちも落ち着いたのかナミが素直にうなづく。
美味しそうに食べるナミだったが、俺は目頭を押さえて涙を堪えていた。


サンジ・・・・・あいつ辛子やらタバスコやら入れやがって・・・・!
ああ!くそ!さっきの言葉は撤回だ!あのエロコックめ!


しかしながら、残すのも負けたようでしゃくなので酒とともに喉に流し込んだ。
「大丈夫?ゾロ?」
デザートに入っているナミが心配そうに聞いてきた。
「ああ、まあな・・・。ちょっと・・・味がきつかったみたいだ・・・。」
鼻に抜けるきつい味に顔をしかめながら、時が過ぎるのを待った。
「ゾロ。」
ふと顔をあげると至近距離にナミの顔。ゆっくりと唇が重なり、隙間をぬって甘い味が口に入って来る。
それがナミの食べていたゼリーだと分かるまでしばしの時間を有した。
「どう?」
にこりと笑うナミはいつもの様子で、俺はそれにつられて笑った。
「大分いい。」
「大分?」
首をかしげる姿は小悪魔的で、俺はそれを誘うように軽く顎で促した。

 


ミカンの味が口の中に広がる。それはナミの楽しそうな様子とともに次第に俺の頭を溶かしていった。


日が高くなって来たのか、部屋の中が次第に上がっていくような気がした。


戯れに交わすキスは甘く、何度も抱いたナミの身体は手にしっとりと馴染む。


時間の許す限り、俺達はその行為に没頭していた・・・。

 

 

 

 

おまけ

 


「・・・なあ・・・ナミ・・・つーかゾロとナミ遅くねえか・・・?」
ウソップがちらちらと時計を見ながら呟いた。
「またヤってんのかなあ。」
ルフィの言葉にサンジがぴくりと反応する。
「お、おい!ルフィ!」
「まあ、若いっていいわね。今日も部屋に戻れそうもないかしら?」
ころころと笑うロビンにウソップは突っ込みようがなくおろおろとサンジの様子を見る。
「あ・・・いつ・・・!人が黙ってりゃあいい気になりやがって!!!」
サンジがぶるぶると包丁を持ったまま震えだした。
「殺す!あいつ!絶対殺す!!!!!!」
怒り爆発といった感じでサンジが包丁をふりかざした。
「あら、危ないわ。」
「すみません。お姉様!」
さっきまでの勢いはどこへやら、サンジは目をハートにしてロビンに振り返る。

 


その様子にウソップは大きなため息をつき、いかにして二人を部屋から出したものかと考えを巡らせていたのであった・・・。

 

 

その後・・・というのを余りかいてなかったので。
今日は剣豪いたしませんよ。いちゃいちゃしてるだけです。
ちうーーーっとね。