女の花道

一人、港町を歩いていると女の子が店先できゃあきゃあと騒いでいるのが目に付いた。
中を見るとチョコレートが山のように積まれている。
そうか、今日はバレンタインデーだ。
そのチョコを見ながらぼんやりと思う。
皆に配るチョコでもかおうかな。お返しは3倍返しは基本よね。
店の中を練り歩き、適当なチョコをかごに入れる。
ゾロには・・どうしようかな。
前に一度甘い物が苦手だと聞いた事がある。チョコをあげたら嫌な顔をするだろうか。
いや、あげれば食べるだろうし、何より皆にあげるのにゾロにだけあげないというのも・・・。
いくつかのチョコを手に取りぶつぶついいながらそれを見る。
はたから見ればかなり怪しいだろう。
しかも、世間でいうバレンタインデーは女の子には勝負の時。
迂闊な物はあげられない。
まあ、あの朴念仁はそんな意味は知らないだろうが、自分の気持ちを伝えるいいチャンス・・・。
そんな事を思っていたら急に気恥ずかしくなり慌ててチョコを置く。
ゾロには後でゆっくり考えよう!
別にチョコじゃなくたっていいんだし。いや、まだつきあってもいないのにチョコ以外のものをあげるのも・・・。
赤くなったり青くなったりナミは店の中を小一時間程うろついていた。
店員も不思議そうにナミを見る。
ふと、店の端にあるボトル柄のチョコが目に付いた。
「これなんですか?」
店員に聞いてみるとそれはチョコの中にウィスキーが入っているという。
これならゾロも食べるだろうか・・・?
さんざん考えた末、いくつかのチョコを買った。もちろん別包装で。
船に帰るゾロ以外は皆キッチンにいた。
「あ、お帰りなさい。ナミさん。」
サンジ君が私ににっこりと笑いかける。手に持っている紙袋を目に止め、どこか楽しみにしているように見える。
「ナミ、何買ってきたんだ。食い物か!?」
ルフィは私の方へ歩み寄る。
「大人しく座ってなさいルフィ。」
いわれるがまま椅子に座る。足は待切れ無さそうに椅子の下でせわしなく動く。
「今日はバレンタインデーなんですって。はい。チョコ。」
「おおーーー!!なんだこれー!?食ってもいいかーーー!?」
「いいわよ。」
それを見ていたサンジ君の様子がどことなく落ち着かない。
「そうそう、サンジ君にも。はい。」
「ありがとうございます!!ナミさん!!これはもう俺への愛ですね!!!」
さすがにサンジはバレンタインデーの意味を知っていたのか私の手をきつくつかむ。
「ルフィと同じだけどね。」
さらっとそう言ってのけるとサンジはがっかりと肩を落とした。
ルフィは一瞬にしてハート形のチョコを口にいれた。
「こら!クソゴム!!味わって食え!!」
サンジ君がが一喝する。
ウソップにもチョコをあげると嬉しそうにお礼を言った。
男の子ってこんな事に喜んだりするんだ。
私はそれを見て笑ってしまった。
「そういえばゾロは?」
「ああ、あいつならみかん畑で見ましたけど。まさかナミさん!あいつにもあげるんですか!?」
サンジ君はは大袈裟に悲しそうな顔をする。
「だって、皆にあげてるのにゾロにだけあげないわけにはいかないでしょ。」
私はそう言うと紙袋を持ってキッチンを出た。
キッチンを出て、紙袋の中を確かめる。
中にはきれいに包まれたチョコが入っている。
さすがにこれをサンジ君が見たら分かっちゃうからね・・・。
私は階段を上りみかん畑へ行った。
木陰で気持ちよさそうに寝ているゾロを見つけた。
急に鼓動が早くなる。
落ち着け私!チョコを渡すだけなんだから!!
大きく深呼吸をして髪を整える。
よし!行くぞ!!
気合いを入れて階段を昇る。女は度胸だ!
「ゾーロ。」
呼び掛けるが返事はない。というか起きる気配もない。
腕枕をし規則正しい寝息を立てている。
「・・・ゾロ?」
傍らに座り、ゾロの顔を覗き込む。
そういえばこんなに間近にゾロを見るのは初めて。
もっと近くで見たくてゾロの身体のわきに手を置き、ちょうど覆いかぶさるようにゾロに顔を近付ける。
それでも起きる気配はない。
・・・なんか・・・いたずらしたくなるなあ・・・。
無防備に寝息を立てるゾロの顔をしげしげと見つめる。
少しヒゲがのびてる。のど仏も見える。太い首。・・・男の子・・・なんだなあ。
何分くらいか、それとも一瞬だったのか。じっくりとゾロを眺めていると・・・
「おい。」
「え!?」
いつのまにか片目をあけてゾロがこっちを見ていた。
「お・・・起きてたの!?」
「ああ、襲うなら早くしろよ。待ちくたびれたぜ。」
はたと我に帰るとまさにゾロに覆いかぶさる形で言い訳のしようもない。
「ち・・・!違うわよ!!!寝てるからいたずらしようかなと思ったのよ!」
慌てて身を起こすとゾロもだるそうに身体を起こす。
「だから、襲いにきたんだろ。待てどくらせど何もしねえから・・・」
そういって大きなあくびをする。
「違うってば!これを渡しにきたの!!」
そういって紙袋をゾロに突き付ける。
何もいわずそれを受け取ると中の包みをみて不思議そうになんだこれ、と聞いてきた。
「今日はバレンタインデーなの。皆にもあげたから一応あんたにもと思って。」
「へえ。」
それだけ言うと包みを開けはじめた。
起きてたのか・・・何もしなくてよかった・・・ん・・・待てよ。手を出すのをまってたって事は・・・。
なにか大きなチャンスを逃したようで悔しくなって床をこぶしでたたく。
「何やってんだお前。・・・へえ、チョコか。」
そう言って口に一つ投げ込む。
「普通のチョコだといやがると思ってお酒入りを買ってきたの。どう?」
「ああ、いい酒だ。で?」
「で?ってなにが?」
ゾロの言わんとする意味が分からなくて聞き返す。
「これだけかって聞いてんだよ。あんだろ。ほれ」
そういってゾロは両手を広げる。
「・・・何やってんの?」
「大体こういう時は『私もあげる』っつーんだろ?ほら、早くよこせよ。」
「なわけないでしょーーーー!!!」
ゾロの頭を殴るとまくしたてるように言い放つ。
「だいたいバレンタインデーにチョコで告白って言うのはお菓子会社の陰謀なの!!もともとはお仕事御苦労様って意味をこめて食べ物を送る物なの!今日は日頃働いてもらってるからそのお礼なんだから!誤解しないでよ。」
「なんだ。つまんねえ。」
そういってまたチョコを一つ口に頬張る。
それをみて、またはたと我に帰る。
また大きなチャンスを・・・!!!!
「だからなんで床たたくんだよ。」
ああ、もうこの口が憎い・・・!!
それにしてもゾロッてたまに冗談だか本気なんだかわかんないからたち悪いわ・・・。
うなだれている私にかまわず最後のチョコの包みを取る。
「お仕事御苦労様ね・・・じゃあ、俺もお前にあげなきゃいけねえな。」
「へ・・・?」
振り返るといつの間にかゾロが私の目の前に来ていた。
あまりの事に何がなんなのか分からずぽかんとする。
ゾロは口にチョコを含むとそれを噛む。
パキんと言う音がしてそのまま私に唇を重ねてきた。
「・・・・・・・・・・!」
何が起きたのかわからず、目を見開いたままの私をゾロは少し目を細めて見ていた。
ゾロの手が頭に回り、身を引こうとする私を固定する。それになぜかゾクリとする感覚を覚えた。
「・・・や・・・。」
抗議の声をあげようとすると、その間をぬってゾロの舌となにかとろりとした物が口に流れ込んできた。
「・・・ん・・・!」
身を引こうとするとゾロのもう片方の手が腰を押さえ自分の方へ引き寄せる。
ゾロの舌はなおも私の口の中をはいまわる。
鼻に抜けるウィスキーの香り。私はそこで何が起こったのかやっと理解した。
やっとゾロは私から唇を放し、もう一度軽くキスをする。
口に残るチョコの味とウィスキーの香り、そしてゾロの感触。
身体に力が入らなくてゾロにもたれ掛かるように荒く息をする。
「お仕事御苦労様・・・だろ?」
意地悪く微笑むと私の頬を手で包み、自分の方に向かせる。
「・・・ばか。」
それだけ言うともう一度ゾロの胸に顔を埋める。
・・・なによ。私一人であれこれ考えてばかみたいじゃない。
「・・・ものたりねえか?なんならここでもいいぜ。」
そう言ってキャミソールに手を入れようとする。
「・・・な・・・!何考えてんのよ!!!!!ばか!!」
ゾロに二発目のパンチを入れる。
「・・・っだよ。お預けかよ。」
ゾロは頭を押さえながら呟くように言う。
「馬鹿!!もう知らない!」
真っ赤になりながら私は部屋に戻り、唇に残る余韻にそっと指で触れてみる。
ゾロとキスした。
なんだかうれしくなり、小さなガッツポーズをした。

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ゾロナミバレンタインデー用小説・・・。
なんと恐ろしい事に続きがあります。
あまりの恥ずかしさに自分がぶっちぎれそうです。
がばがばがばがば。