海辺の町は夜ともなると活気を増し朝一番に猟を控えた男たちが先を急ぐように店へと消えて行く。
ナミは空になったグラスを置いた。
もうこれで何杯目だろうか。ただただ強い酒を浴びるように飲む。
酒に強いのも困り者ね。
ナミは自嘲ぎみに笑った。
頭から離れないのはゾロと隣にいた女。
ナミとて子どもではない。それがなにを意味するか分かっている。
何よ!ゾロったら!やりたいなら言えばいいのよ!
なんであんな女と!・・・私のほうが可愛いし、スタイルだっていいのに・・・。
なみなみとグラスにウォッカを注ぐ。
「お嬢さん・・・やめた方が・・・。」
「うるさいわねえ!!今日は酔いたいのよ!!」
そういって一気に飲み干す。喉が焼け付くように熱くなり、ナミは咳き込んだ。
「・・・ばか・・・。」
「・・・悪いな。」
薄暗い部屋の中身支度を終えたゾロが、未だベッドに横たわったままの女に詫びている。
「いいのよ。こっちこそ。今度またあったら遊んでよ。」
「・・・。」
それには答えず、香水の香りのつまった部屋から出て行く。
扉をあけると外はもう暗くなっていた。
「まいったな・・・。情けねえ。」
サンジに知られたら思いっきり笑われるだろう。
まさかたたねえとは・・・。
ゾロは頭をぼりぼりと掻いた。
原因は分かった。ナミだ。
ナミに似たオレンジの髪。
抱いたらあの日の事を思い出すかも知れないと思ったのだが、頭にちらつくのはナミの顔ばかり。
どうやら自分で思っていた以上に真剣だったらしい。
「まじかよ・・・この俺があんな性悪女に・・・。」
ゾロは大きなため息を付いた。
これでイライラの原因も分かった。ナミが俺の事を考えないからだ。
そんな女々しい事を心の奥で思っていたなんて・・・。
「ちくしょう。」
いら立ちから悪態を付く。
船に戻ろうと思うが歩けども海の姿も見えない。
「また・・・迷っちまった。」
いまのゾロは何に対してもいらつく事ばかり。
「おい。聞いたか。すっげえ大酒飲みの女がいるらしいぜ。」
ふと耳に入る男の声。
大酒のみ?まるでナミだな。
一瞬ふっと表情が柔らかくなる。
「なんでもかなり可愛いらしいぜ。」
「へえ。ほんとかよ。」
「いや、でも入れ墨してるからこっちの女かもよ。」
男は頬を指でなぞった。
入れ墨?
「おい。そいつのところに案内しろ。」