「いい?何もなかったのよ!分かった!!」
ナミはしつこいくらい念を押す。
「ああ。わかったよ。」
何かふに落ちない物を感じながらゾロはうなづいた。
「もう。」
ナミの後ろをただ付いて行くだけだったが、ゾロの目に映るナミは華奢で、かといってただ細いだけではなく女性特有の美しい身体をしていた。
この身体を俺は本当に抱いたのだろうか。
そんな考えが頭をかすめる。
身体に残る感触はどこかぼやけていて掴もうとしても手の間からこぼれてしまうくらいかすかな物だった。
「何みてんのよ。」
ゾロの視線に気付いたのか、ナミが後ろを振り返る。
「なんでもねえよ。・・・それより足でもひねったか?歩き方おかしくねえ?」
そう、先ほどから気になっていたのだが、ナミの歩き方はどこかぎこちなかった。
「っっさいわねえ!!痛いのよ!この強姦魔!!」
ありったけの声でナミが叫ぶ。
それを聞き付けた通行人がわらわらと集まってくる。
「・・・な!人聞きの悪い事いうな!!!!!あの状況じゃどう考えても同意の上だろうが!!!」
「分かるわけないでしょ!なによ!覚えてないのをいいことに!!」
「っせーな!てめえだってそうだろうが!!」
いつしか通行人もただの痴話げんかととったのかまたいつもの平和な市場に戻って行った。
「あんたも一度掘られればいいのよ!!」
「ほら・・・女がそんな事言うな!」
「関係ないでしょ!!馬鹿!!」
反撃を許さないナミの口調にかなうわけもなく。
ゾロは唇を噛み締めその場はナミの勝利となった。
「くそ!」
軽く舌打ちをして悔しさを紛らわす。普段よりナミには勝てないが今回は特にナミに対して罪悪感もあった。
女と言う物は「初めて」に大分こだわるらしい。
いままで抱いてきた女もその事だけは忘れないと言う。
それが酔っぱらった上で好きでもない男ともなるとショックの大きさは男の預かり知るところではないだろう。
気丈にふるまってはいるが目を放したら泣くかも知れない。
そう思うとかえって何もできない・・・というかしてしまった自分に腹がたつ。
ゾロは大きなため息をついた。