夢の中10

 

歩けども歩けども船は見えてこない。


もう真夜中になっていて通りには人っ子一人いない。


ナミはいつの間にか寝てしまっている。
これはもう宿を取るしかないと考え、ゾロはちょうど通りにあった宿に入った。
カウンターにはうたた寝をしていた主人らしき男が一人、いぶかしげに二人を見た。
「すまねえが部屋を二つ用意してくれないか?」
主人はナミとゾロを交互に見て棚にかかっているカギを一つだけとった。
「そんな酔っぱらったお嬢さんを一人部屋に置くのは危なくてしょうがないね。一部屋なら貸してやるよ。」
そう言ってカギをカウンターに置いた。
ゾロはしょうがなくそれを受け取り、部屋へと向かった。
部屋にはベッドが二つ、ソファが部屋の端に置いてある飾り気のない部屋だった。
ナミをベッドに横たわらせ、ふとんをかけてやると小さく動き、また寝息を立てはじめる。


「・・・人の気もしらねえで・・・。」


ゾロはナミの柔らかい髪を指に絡ませる。
それはさらさらと指からこぼれ、ナミの頬へと落ちる。
その指でそっとナミの頬を撫でる。
ナミの頬は柔らかく、すべすべしていて、ゾロはたまらずその頬に唇をよせた。
まるで触れたところから解けてしまいそうな柔らかさで、その先にあるほんのり赤い唇がゾロの心引いた。


これ以上は自分をおさえられなくなる。
そう考え、身体を起こして大きなため息を付いた。
「・・・はあ・・・。」
ふと、甘ったるい匂いが鼻についた。

「・・・なんだ?」
ナミの匂いではないらしい。自分の身体をくんくんとかいだ。
「・・・あ・・・。」
裏通りであったあの女の香水の匂い。
身体に残るその匂いは服にまで染み付いたらしい。
なんともいたたまれない気分になり、ゾロはシャツを脱ぎ捨てた。
よけい匂いが周りに散乱し、そのせいで気分が悪くなった。
「・・・ちくしょう。」
俺はそのままの格好でバスルームに入った。水音でナミは目をさました。

 


あれ?誰かシャワー浴びてる・・・。
ナミはぼんやりとした頭で考える。
そのうちに自分がいる部屋が船ではない事に驚いて跳ね起きる。
「ここ・・・どこ・・・?」
見た事もない部屋。
慌てて自分の服を確かめる。
特に乱れた様子もない。
バスルームからはシャワーの音が聞こえる。


なんで!?さっき飲んでて・・・ゾロがいたような気がして・・・。
まさか・・・あたし・・・。


ふいにシャワーの音が止んだ。
がたがたという音が聞こえて、誰かがバスルームから出てくる。
ナミはシーツのはしを握りしめた。


「あー・・・。」


見えたのは緑色の頭。
ナミはどっと緊張が解け、安心感からか涙が出てきた。
「お・・・おい!ナミ!ち、違うぞ!お前が酔いつぶれて寝ちまうから部屋を・・・。そしたらおやじがお前一人部屋に置くのは危ねえっていうから・・・!」
ゾロはナミの涙にうろたえ、なんとかなだめようとする。
「ちが・・違うよ。」


びっくりしたの。ゾロ以外の人に何かされると思って・・・。


なんとか伝えようとするが涙が後から後から出てきてうまく言葉にならない。
「泣くなよ。な。俺は外で寝るから。なんもしねえから。」
その様子にナミはおかしくなって笑った。


気付いてる?結構情けないよ。あんた。


「なんだよ。」
いささかむっときたのかゾロは眉をひそめる。
身体からは水滴がぽたぽたと落ちている。
握りしめたシャツからも絶えまなく水滴が落ちる。
「なにやってんの?」
ナミはシャツを指差し聞いた。
「ああ、洗ったんだ。」
ゾそれ以上聞かれたくないという感じだったのでナミはも聞かなかった。
「酔いはさめたのかよ。」
「うん。まあ・・・、ゾロがここまで?」
「ああ、何があったのかしらねえが女一人で飲んでんなよ。せめて俺らの目の届くところで飲め。危なくてしょうがねえ。」
ナミはうつむいた。


気付いてないんだ。あたしが酔いたかったわけ。


「とにかく俺は廊下で寝てるから。お前ももう寝ろ。」
「その格好で?風邪引いちゃうよ。」


お前の泣き顔見るよりましだよ。やっぱり嫌だったんじゃねえか。俺の顔見るなり泣き出しやがって。

「いいんだよ。俺は。」

ゾロはナミから目をそらし扉へ向かおうとした。

「よくないわよ。いいよベッド二つあるんだし、ここで寝ればいいじゃない。」
ナミはゾロのズボンを掴んだ。
ゾロはその言葉に何か言おうとしたがナミの真意をはかりかねてそのままそっぽを向いた。
「あたしと一緒が嫌なの?じゃあ、あたしが廊下で寝る。」
ナミの言葉にぎくっとした。


このままではナミの事だからさっさと廊下に出るに違いない。


ゾロはため息を付くとナミの手をズボンから離した。
「わかったよ。そのかわり朝になって騒ぐなよ。お前は飲んでるから信用ならん。」
「もうさめたわよ。とにかく身体拭いて!!ほら!シャツもさっさと干してよ!乾かないでしょ!」
そういってなナミはゾロから濡れたシャツをもぎ取った。
タオルでがしがしと身体を拭いてる間にナミはシャツをきつく絞り部屋の隅にある椅子にかけていた。
それを後目にゾロはさっさとふとんにもぐりこんだ。


早く寝てしまわないと理性がとびそうだ。などと考えながら・・・.

 

うふ。

微妙なすれ違い(当社比)
うーふーふー。