私と私

 

まだぼんやりとした意識の中で大きな手が頭をなでていた。昔、母にされたようにあたたかく、優しく。


「ん・・・。」


うっすらと目を開けると目の前にはさっきまで自分を抱いていた男の身体。逞しい胸の感触が心地良く、頬を押し当てて心臓の音を聞く
「起きたか。」
大きな手が髪を掻き分け、表情を見ようとゾロが顔を傾けた。
「気絶してたの?」
まだ身体に痺れるような余韻が残っている。こんなに感じたのは初めてだ。
「ああ。」
「どれくらい?」
「長くねえ。」
確かに、部屋はまだ明るく、さほど時間がたってないような気がした。
「なんか飲むか?」
「いい。動けないからもう少しこのままで。」
そういってゾロの肩に手を滑らせる。それに一度起きかけた身体をベッドに沈める。
「ほんと気持ち良かった。なんでかな?そんな上手い訳でもないのにね。」
くすくす笑いながらしゃべるとくすぐったそうに身をよじる。
「悪かったな。」
しばらくしてぼつりてゾロが呟いた。


「わかんねえか?」


ふと顔をあげるとすこし困惑したような顔をしていた。少し考えたがゾロの言わんとすることが思い付かない。
「身体の相性がいいって言いたいの?」
「いや、わかんねえならいい。」
そう言って天井を見上げる。それを見てまた熱い身体に頬を落とす。
「明日…」
「え?」
「明日来るのか?」
少し声が震えていたような気がする。


どうしたんだろう?今日のゾロは変だ。


「来ないかも。」
そう言うとゾロの身体がぴくりと動いた。
「テスト始まるしそれに…。」
「それに?」
「…生理来るし…。」
「そっか。」
そういうゾロの胸は大きくゆっくり上下した。
「そんなら。」
そういうと顎に手をかけ、顔を上げさせると唇を重ねて来た。
その感触に冷たくなった身体にさっと熱が走る。
「また?」
「当分出来ねえんだろ?」
「そ…だけど。」


そのままもう一度して、ふらふらの身体で家についた時にはもう大分日も落ちていた。

 

テスト週間に入ってがぜん忙しくなった。
毎回結構真面目に講義に出ているのでテストには困らないんだけど、その変わりノートを借りにくる人やヤマを教えて欲しいという人の対応でいっぱいいっぱいだった。


この時期急に友達が増えたような気がするのは気のせいじゃないかも。


唯一の楽しみはサンジ君の作ってくれるランチだけ。毎日忙しいのに凝った料理を作ってくれる。彼の巧みな話術も手伝って、味気ない学食が一端のレストランのよう。


「今日はローストビーフのサンドウィッチにシーザーサラダです。スープは栄養たっぷりの冷製トマトスープ。さ、召し上がれ。」
「わあ、嬉しい。すごいおいしそう。いただきます。」


私の食べてる様子に満足げな顔をする。その目がすごく優しくてこっちまでほんわかした気持ちになる。


ふと、サンジ君が何かに気付いた用に私の後ろに視線を送った。

それにくるりと後ろを振り向くとそこには見慣れた男の姿。

 

ゾロ。

 


心臓が大きく跳ねた。

 


なんで!?

 


しかしゾロは私に目もくれずサンジ君に声をかける。
「おう。」
「どうした?」
それにもぎくりとさせられる。


どうしてゾロのこと知ってるの!?


「ノート貸してくれよ。」
「ああ、そういやそんな話…。」
そう言いながらバックの中をごそごそと探り出す。
私はゾロの方を見れず、じっとサンジ君を見ていた。
ゾロがどんな顔してるかなんて分からなかったが。背中に痛い程感じる存在感。
「やべ!講義室に置き忘れた!取って来るから待ってろ。」
「ああ。」
「ああ、ナミさん。こいつゾロ。同じ講議とってるんだ。」
屈託のない笑顔でゾロを紹介され、ちくりと胸が痛んだ。
「初めまして。」
愛想笑いを浮かべ空々しい挨拶を交わす。


ゾロの顔には動揺とか戸惑いとかそう言った物が一つもなかった。


「ちょっととってくる。」
そう言ってサンジ君は席を立った。それと入れ代わる用にゾロが私の隣に座る。


「どういうつもり?」
「喋ってるの聞かれるとまずいんじゃねえのか?」
「当たり前よ。なんで来るのよ」
「聞いたろ?ノート借りに来たんだよ」
「嘘。この間話したときサンジ君の名前も知らなかったくせに。」


ゾロはそれには答えず、サンジ君の置いて行った煙草に火を付けた。


ゆっくりと煙草を吸う姿に違和感を覚える。


「・・・あんた・・・煙草吸ったっけ?」


ゾロはちらりと私を見るとふっと笑った。


「いや。吸わねえ。」
「今吸ってるじゃない。」
「お前は吸わないよな。」
「・・・吸わないわ。」
そういうとにやりと笑い、煙草を消した。


その態度になぜかいらだった。


「おまたせ。おら、俺も使うから早く返せよ。」
「ああ、サンキュー。あ、煙草一本もらったぜ。」
「ああ、かまわねえよ。」
ノートを受け取るとすぐに立ち去っていった。
「どうしました?ナミさん。」
「ん?なんでもない。」


自分のペースを乱されたみたいですごくイライラしていた。


ほんと嫌なやつ。

 


あんたなんか大嫌いよ。ゾロ。

 

 

 

 

サンジ君は?

本編開始。
いい感じにサナゾ?