私と私

 

 

これで最後だ。

 


自分にそう言い聞かせる。


優しく触れる唇はいつもよりも熱くて、太い腕は包み込むように身体に回る。

 


ああ、本当に自分はゾロとのセックスが好きだったんだと今更ながら実感する。


慣れた手つきで服をぬがされて、時折羽根のようなキスを身体に落とされ、その感触に身体が震えた。

 

 


どうしてサンジ君は私を抱かなかったのだろう。


どうして私はゾロに抱かれているんだろう。

 

 

溶けそうになる意識の中で自問自答を繰り返す。
答えも出ないまま行為は続いて行く。


いつの間にか服を全てぬがされて、ゾロの目に曝されていた。
もう何度もあられもない姿を見せていると言うのに恥ずかしく感じるのはゾロがまだ服を着たままだからだろうか。
腕で胸を隠すと、その腕に口付けられ、そっとどけられる。そのまま膨らみに舌を這わされ、背筋にぞわぞわとした感覚が走る。
軽い音を立ててゾロが首筋にキスをする。
「あ。」
それに思わず声がでる。ゾロはまだ服を脱ぐ気配がない。


どうして?私だけ?


そう考えているとゾロの唇がだんだんと下に降りて行く。
「あ・・・!や!」
ゾロはいままでそんな事をした事はなかった。
慌てて離れるゾロの頭を追うが、それよりも先に熱い舌が私の潤み切った部分に触れる。
「あ・・・ん!」
我を忘れて身体をのけ反らせる。
ゾロは執拗にその部分を攻める。
あまりの恥ずかしさにそれをやめさせようとするが、襲ってくる快感には逆らえず、きつくシーツを掴んで、それに耐えた。
つ。とゾロの舌が熱い核を捕らえる。
「やあ・・!」
身体に電流が走ったように痛い程の快感が走る。
ゾロはそこを舌でつつき、なめあげる。
「や・・!あぁ!ゾ・・・やあ!」
一瞬頭が真っ白になり、身体の中を何かが駆け上がるような感覚に陥る。
ピンと這った背中にゾロの腕が回り、それに崩れ落ちるように体中の力がどっと抜ける。
もう、完全に息は上がっていて、身体に触れるシーツにすら快感を覚える程だ。
「ん・・・は・・・あ・・・。」
酸素を求めるように深く息を吸う。
涙で潤んでゾロがよく見えないが、大きな手が頬をなでる感触だけ分かった。


「お前・・・本当にろくなやつとセックスしてこなかったんだな。」


「・・・な・・・!」


絶頂を迎えてけだるい意識を一気に現実に引き戻される言葉にカッと顔に血が登る。
「あんたに言われたくないわよ!」
ゾロの身体を引き剥がそうとするが、力が入らず軽く押しただけに終わった。
ゾロはその手を取って、指を口に含む。
「な・・・!やだ!やめてよ!」
まだ熱を持った身体はそれだけの刺激にも敏感に反応する。


「こうやって抱いてやってんのに全然気付きゃしねえ。」


「え?」


ゾロの言葉に思考が止まる。


「本当に鈍感だな。俺がしてえだけで女抱くとでも思ってんのかよ。」


急に鼓動が速くなった。

 


何?何を言ってるの?

 


ゾロはじっと私を見ていた。
その視線から逃れたくて、顔を背ける。
「逃げるなよ。分かるだろ?」
「分かんない!」
「強情だな。」
そういうと背中の手をついと動かす。
「や!」
「感じてるんだろ?」
「そ・・・んなわけない!」
耳もとの低い声に身体が震える。

 


認めたくない!違う!私はあんたなんか大っきらいなんだから!

 


ゾロは肩から鎖骨にかけて唇を滑らせる。
また腰の辺りがじわじわと熱を持ってくる。
「や・・・!ずるい!」

 


一度イかされた身体は感じやすいのだ。決して『ゾロ』に感じてる訳ではないと心で何度もくり返す。

 


「いいこと教えてやるよ。好きな女抱きたくないって男がいたらそれは嘘だ。・・・好きな男に抱かれたくないって言う女もそれは嘘だ。」
身体に響く声。

 


私は誰が好きなの?

 


「ナミ・・・お前は誰に抱かれたかった?」

 


サンジ君はなぜ私を抱かなかったの?

 


熱い手が唇をなぞる。答えを促すように、諭すように。

 

私は・・・誰に抱かれたかったの?

 

見下ろす深い緑の瞳。

 

私は・・・私は・・・。

 

 

 

 

「ゾロ・・・に・・・。」


涙が頬を伝った。掠れた声はゾロに届いたらしく、優しい笑顔を浮かべ、キスをくれた。

 

 

 

初めて知った。

 

 


好きな人に抱かれると言う事が快感につながると言う事を。
ノジコが綺麗になって行ったのも好きな人に抱かれていたからだと。
そして・・・サンジ君が私を抱かなかった理由も。


熱い身体も心地よく感じる。もっと感じていたくて今までで一番深くキスを交わす。


今まで知らなかった気持ちが胸の奥に溢れてくる。

 


「今さらだけど・・・言っていい?」
「ん?」
額に汗を浮かべながらゾロが耳をよせてくる。
「・・・好き・・・かも。」
「・・・ほんっと今さらだな。しかも、『かも』かよ。」
お返しとばかりに身体を揺さぶられる。
「あ・・・!ん・・・!も・・・!」
「は・・・ナミ・・・!」
互いにぶつかる程のキスを交わし、登り詰めて行った。

 

 


「あーあ。こうなるんじゃねえかと思ったけどよお。クソマリモ。」
「あ?当然の成りゆきだろ?ぐるぐるまゆげ。」
大学で偶然(というか必然)に顔を合わせた二人は案の定激しい火花を散らした。
「てめえ、俺と友達のふりしてナミさんを奪おうなんざ、クソ汚ねえ野郎だな。男の風上にも置けねえ!」
「ああん?先に声かけてきたのてめえだろうが!」
「んだと!てめえが隣でガーガーいびきかきながら寝てやがるからだろうが。迷惑なんだよ!万年寝太郎が!」
「っだとお!だったらほっときゃいいだろうが!」
「俺様の繊細な耳に害を及ぼすだろうが!わかんねえのか!この・・・クソ野郎が!」


そういうと鈍い音がして、ゾロがのけ反った。


サンジ君がゾロを殴ったのだと気付くまでに時間がかかった。


「きゃ・・・!」
「とりあえず、一発。」
ゾロは口元を拭うとにやりと笑った。
「まあ・・・一発ぐらいは義理で殴られてやるが二発目はねえぜ。」
「言うじゃねえか。足腰立たなくしてやるぜ!」
「そりゃこっちのセリフだ!」
互いに火花を散らしながら、殴る隙をうかがっている。
ゾロの手が動いたその瞬間。


「やめなさい!」


気付くと二人にパンチを食らわせていた。


「あたたたたた。ナミさーん。何するんですかー。」
「ってー。なんだってんだ。」
二人は大袈裟に驚いてみせる。
それをみて、大きく深呼吸をして言い放った。


「いい!?悪いのは私なんだから殴るなら私にしなさい。それでチャラ!いい!?」


よく考えれば虫のいい話だが、言ってしまった事はしょうがないと胸を張った。


「だよなー。ナミさんには泣かされたし・・・。」
「・・・おい・・・!」
ゾロがサンジを止めようと一歩進む。
「ゾロ!だめ!」
私の迫力に押されたのか一瞬困った顔をする。
「安心しろよ。何も殴るわけじゃねえよ。ぺちっとやって終わるさ。」
「さ、どうぞ。」
ぎゅっと目をつぶり、衝撃に身構える。
ゾロはそれを苦々しげな顔で見ていた。

 


「じゃ、お言葉に甘えて・・・。」

 


ぺちっとサンジ君の手が頬にあたった・・・そして・・・もう片方の頬に柔らかな感触。

 


「・・・な・・・・!」

 


ゾロと私が声を上げたのは同時だったと思う。


サンジ君は事もあろうか私の頬にキスをしたのだ。


「何してやがる!」
離れようとしないサンジ君を引き剥がそうとゾロが駆け寄ってくる。
それをみてやっとサンジ君が離れた。
「あー?ぺちっとな。言っとくが俺はまだナミさんを諦めた訳じゃねえぞ。てめえがナミさんを泣かせたらまっ先に口説きにかかるからな。」
にやりと笑うサンジ君にぽかんと口を開ける。


「さ、ナミさん。あちらで俺特製ランチはいかがですか?」
にこりと笑うサンジ君は以前のままだ。
「おい、ナミ行くなよ。」
明らかに余裕のないゾロに思わずいたずら心が芽生える。
「そうねー。サンジ君のごはん美味しいし。行っちゃおうかな−。」
「な・・・!」
「おう、クソマリモ。てめえも来るか?残飯ぐらいだったらやるぜ。」
「誰が行くか!」
「あーそー、じゃ、ナミさん。二人っきりですね。」
「そうね。サンジ君。」
「待て!俺も行く!!!」

 


慌てて追い掛けてくるゾロにほくそ笑みながら、三人でゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 

 

FIN
 

ごめんなさい。土下座。しょぼい終わりでごめんなさい。期待させてこれかよ!と思う方もいらっしゃると思いますがそこはかんべん。あーーー長丁場でした。御苦労様です。ぺこ。