私と私

 


好きよ。


優しいし、かっこいいし、私を大切にしてくれる。
だから、こうやって抱かれるのも別に怖くない。


だって私達付き合ってるんだもの。


付き合ってるならしなくちゃいけないんだから。

 

「サンジ君・・・?」
胸元のサンジ君の動きが止まった。
不思議に思い、顔を少しあげる。
「どうして・・・。」
サンジ君の声が震えている。
「違うよ。ナミさん・・・俺はそんなあなたが抱きたいんじゃないよ。」
「サンジ君・・・。」
サンジ君は顔を伏せたまま喋る。
金色の髪に隠れて顔が見えない。
「どうして・・・。」
長い指が血の気がないほどシーツをきつく掴む。


ふっと身体が軽くなった。
サンジ君は何も言わず立ち上がって扉へ向かった。
「・・・サンジ君・・・?」
「すみませんでした・・・。帰ります・・・。」
最後までサンジ君の顔は見えなかった。
扉が締まる音だけがやけに部屋に響いた。

 

何が違うの?抱ければそれでいいんじゃないの?
男の人はそういうものだって。
身体を重ねるだけなら彼氏じゃなくていい。ずっとそう思ってた。

 


サンジ君は私に何を求めていたの?
私はサンジ君に何を求めていたの?

 


ひとり残された部屋で、捕らえようのない考えを巡らせていた。

 

 

私は、どうしたいの?

 

 

 


いつもなら夜にはサンジ君からのコールがなる携帯もその日だけは鳴らなかった。
かといってこちらからかける勇気もなく、画面に映る時計をただ眺めていた。


「・・・どうしたらいいんだろう・・・。」


まるで思考が止まったかのように何も考えられず、同じ言葉ばかりをくり返していた。
ベッドの上で何度も寝返りを打って眠気が来るのを待った。
かつんと音がして、ベッドから何かが落ちた。
「・・・?」
見るとそれはゾロの部屋のカギだった。
「・・・。」
それを拾い上げる。


返しにいこうか・・・。どちらにせよサンジ君とこういうことになったのにゾロに会うわけにもいかないし・・・。


のろのろと起き上がり、身支度をして外へ出た。
大分外は暗くなっていたが、むんとした熱さは昼間とそう変わらない。
歩き慣れた道をぼんやりと歩く。


ゾロの部屋の電気が消えている。どうやら出かけているようだ。

そのままカギをポストに入れて帰ろうかと思ったが、ふと思い立ってゾロの部屋に入る。


前に来た時と部屋の様子は変わってなかった。
ベッドの周りは散らかっていて、出て行ったままの様子のベッドがゾロの気配を感じさせる。
それにごろりと横たわる。
シーツからはゾロの匂い。


ここで何回抱かれたかな?


ぼんやりとそんな事を考える。息をする度にゾロの香りが身体にしみ込んで行く気がする。
「・・・怒るかな・・・。」
らしくない事を考えてベッドから身を起こす。


カギを置いて帰ろう。
ゾロだってそれを見れば分かるだろう。


そう考えて扉へ向かう。
不意に外に人の気配がした。


ゾロだ。帰ってきたんだ。


カギを差し込む音がする。
心臓がどくどくと耳障りな音を立てる。


落ち着いて。ちょうどいいじゃない。会ってお別れを言えばいいのよ。
それだけよ。カギを返してさよならしましょう。


扉が開いてゾロの姿が目に飛び込む。


それに少し胸が熱くなる。


「ナミ・・・。来てたのか。」
「うん・・・。」
「そっか。」
ゾロの顔が少しだけほころんだ。
「・・・ゾロ・・・。」
「ん?」
後ろ手で扉を閉めてゾロがこちらを向く。
厚い胸板も、太い腕もなぜか遠いもののような気がする。


「今日はね・・・お別れを言いに来たの。」


ゾロが目を見開いた。
「サンジ君とも別れるの。・・・これ・・・返す。」


喉がつまって声が出ない。私は上手く伝えられただろうか。


ゾロは私を見たまま動かない。
「・・・どういうことだ?」
ゾロが眉間に皺をよせて問いかけてくる。


答えられるわけもない。自分自身でも分からないのだから。


「理由がいる?私達の関係に。」


お願い。カギを受け取って。

喉がつまる。息が苦しい。
泣きださないうちに、早く。


「ナミ。」
ゾロに呼び掛けられ、びくりと身体が震える。
ゾロはそれ以上何も言わず、唇を重ねてきた。


そうか、最後に一度だけってことなのかしら。


目を閉じてそれに応ずる。


終わりにしましょう。
サンジ君ともゾロとも。


抱きかかえられ、ベッドまで運ばれ、ゾロの香りがまた広がる。


目に浮かんでくる涙を見られないようにゾロにきつくしがみついた。

 

 

 

このまま目を閉じて・・・。

続きます。なんとか公約(?)通りアップ。書いてて自分が思考停止。
次で終わる予定なんですが・・・。はて?
ちょっと気合い入れたいんでまたもじもじして下さい。うふ。