私と私2

 

そっと背中に手が回された。
それだけで心拍数が跳ね上がる。


いや、でもまだだめだ。ナミは顔を上げない。


すうっと嫌な考えが頭を巡り、つい頭に回した手に力がこもる。


腕の中のナミは悲しい顔をしていないだろうか。
虚ろな瞳で見上げてこないだろうか。


それとともに気にかかっていた事が頭をもたげてくる。
「ナミ・・・その・・・。」
もつれる舌で動かないナミをうながす言葉を探す。
「・・・・もし・・・・その・・・俺が・・・俺と・・・するのが嫌だったってんなら言ってくれれば・・・。」
そう言うとナミはぱっと顔をあげた。


よかった。泣いてはいない。


しかし眉をひそめて不思議そうな顔をしている。なぜそんな事をいうのか分からないと言った様子だ。

 


「・・・いや・・・もしかして俺があんまり上手くなくて・・・その・・・。」

 


「違う。」


ナミはふるふると首を振った。
「今言うのもあれだけど・・・ゾロとは・・・気持ちよかったよ・・・。」

ぽっと顔を赤らめてまた顔を伏せてしまった。その仕種がたまらなく可愛くて頭で考えるより先にナミを抱き締めていた。

 


聞いてもいいのだろうか。じゃあ、なぜ?と。

 


俺が口を開く前にナミが言葉を発した。
「でも・・・それが嫌だったの・・・。」
その言葉に驚いてナミの身体を離し、伏せられた瞳を探る。
「なんでそんな事・・・やっぱり・・・。」
「違うの。ゾロのせいじゃなくて・・・私の方なの・・・。」
ナミの言わんとしている事が分からない。


嫌いではないという。抱かれる事も心地よかったと。でもそれが嫌?なぜ?


長い沈黙が流れる。それは一瞬だったかも知れないが、ナミが口を開くまでは永く、永く感じられた。


「・・・じゃないから・・・。」


それはあまりにも小さな声で俺はもっとよく聞こうと耳を近付けた。

 


「初めてじゃ・・・なかったから・・・。」

 


「・・・?」

 


「ゾロとするのすごく気持ちよかったけど・・・それだって今まで色んな人と・・・してきたからだから・・・。だから、いつかゾロがその事を気にし始めたらどうしようって・・・。気持ちよくなればなる程不安になって・・・。」


ナミの瞳から大粒の涙がこぼれ、俺の手を濡らす。

 


「嫌われるかもって思ったら・・・怖くなって・・・だから・・・。」

 


そう言うとナミは自分の手で顔を覆ってしまった。
指の間から透明な涙がこぼれ落ちる。
そのナミをそっと抱き締めた。顔を覆っていた手は背中に回され、頼り無く服を掴む


「・・・ゾロ・・・ごめんなさい・・・。」


何も言わない俺に不安を感じたのだろうか。ぎゅうと服が強く掴まれる。

 

それに愛おしさを感じながらナミの顔を上げさせ、濡れた頬にキスを落とす。そのまま涙の後を唇で消して震える唇に重ねる。

 


嫌いにならないで、側にいて。

 


吐息が囁きかける。それを飲み込んで深く口付ける。服を掴んでいた手をはずし、首に回すよう導くと強く抱き締められ、ナミから唇を求められる。
流れる涙も通さない程きつく重ねられる唇。からみ合う舌は互いを求めて、すれ違う心を埋める。

 


ああ、もう、お前ってやつは。

 


細い身体をかき抱いて食らい付くようにナミを求めた。


「あ・・・は・・・。」


酸素を求めて逃れようとする身体を抱きとめて息さえつかせぬよう柔らかな唇を味わう。


「ゾロ・・・待っ・・ん・・・。」


押しとどめる手は力なく、泣いて赤くなった目尻より染まる頬。

 


なぜ嫌われるなどと思うのか、あまりにも己を知らぬそぶりに喜びすら感じる。

 


ぐったりと力が抜けたのを肌で感じてやっとその唇を解放する。


高鳴る鼓動と上がる息にナミの瞳に不安の色が宿る。

 


「いいから素直に感じてろ。・・・いいか、お前を今、感じさせてるのは俺だからな。これ以上訳分かんない事考えないようその身体に覚え込ませてやる。」

 


そういうとナミの瞳が大きく開かれ、幾度か瞬いた。


何か言おうとして微かに唇が動き、そして・・・・

 


「・・・うん・・・。」

 


華やかに、笑った。

 

 

いいの。何も言わなくて。

言葉少なに口説く男。ゾロ。