私と私2

 

「なんだよ。せっかく久しぶりに会ったんだぞ!」
ルフィは口を尖らせながらぶつぶつと悪態をついた。
こうしてみると歳よりもずいぶん若く見えるが細く見える身体はしっかりと筋肉がついていて顔とのギャップに違和感を感じる。


「なあ、お前ナミの男なんだろ。」


まっすぐに見つめてこられると調子が狂う。
「・・・まあな。」
「なんだよ。マジかよー。ちぇ、ナミのやつ俺にしとけって言ったのに・・・。」
一体いつの話をしているのかルフィは聞き捨てならない言葉を呟く。


「幼馴染みなんだろ。」


半ば牽制とも思われる言葉をルフィに投げかける。
ルフィはすこし伺うような瞳でこちらを見ている。
「ゾロ・・・だっけっか。なんだよ。ナミの男のくせに余裕のないやつだなあ。」
図星を付かれ心臓がどくりと動く。
「今は幼馴染みだけどな。でもお前にそんなに余裕がないなら俺にもチャンスあるかもな。」
にしし、と本当に嬉しそうに笑うその顔に怒るというより感心させられる。
「お前もあいつのこと好きなのか。」
「ああ、当たり前だろ?」
さも当然といったようにルフィが言う。どさりと身体をソファに投げ出して不思議そうに見上げてくる。
「あいつだって俺の事好きだぜ。でもなあ、結構鈍感でさあ、気付いてくれねえんだよなー。いっつも他の男のとこいっちゃってさー。」

 


俺の頭の中に先ほどのナミの笑顔が浮かぶ。

 


「別れるたんびに好きだって言ってんのにさー。」

 


本当に嬉しそうに、懐かしむように、慈しむように、

 


「ナミの中じゃまだ幼馴染みポジションなんだよな。」

 


絶対の信頼に裏づけされた笑顔。

 


「・・・・・結局『男』として見られてないってことだろ。」
ルフィがちらりとこちらに目線を向ける。
「・・・お前もな。ちょっと違うかな?なんだろう。」


ルフィの言葉に今までぼやけていた何かが急に見えてきたような気がした。

 


ああ、そうか。ルフィに向けられた笑顔。時折見せるあの不安げな表情。

こいつは何があってもナミから離れない。その絶対たる信頼。

 


「・・・ちょっと出てくる。」


半分脱いだままのコートのボタンを締めて扉を開けた。

 

 

 

携帯で連絡をとり、ナミの家に向かった。ノジコはまだ帰ってきてないという。
お茶を出そうとする手を止めさせ、ソファに座らせ、向かい合うように俺も腰を落とす。
「ゾロ・・・?」
すっと不安げな顔をして落ち着かないように視線を泳がせる。
「聞きたい事があるんだ。」
そういうとナミの瞳に更に不安の影が落ちた。


「俺の事・・・どう思ってる?」


ナミはぴくりと身体を震わせ顔を伏せた。
「どうって・・・。」
膝に置かれた手が固く結ばれる。
その上にそっと手を重ね、冷たい手を溶かすように包み込んで熱を伝える。
「俺は・・・ルフィのようにはなれないぞ。」
そういうとナミははっとしたように顔をあげた。


ルフィは、ナミを抱かなくても好きでいてくれる。ナミにとって男を超えた存在。


「そばにはいたいと思うが、側にいるだけでいいだなんてそういう考えは持てない。」
ナミの唇が微かに震えている。

 


「・・・・抱きたい・・・。」

 


ナミの頭をそっと肩口に引き寄せる。抵抗なくもたれ掛かり、軽い重みが肩へとかかる。


男として接するとナミの不安を掻き立てる。それがなぜかは分からないが、ナミが俺に求めている事だけは分かった。

 


でも、俺はそれにはなれない。

 


引き寄せた身体が震えている。吐かれる息が肩口で熱くたまる。


何を言おうか迷っているのだろうか。紡がれる言葉は拒絶か、了承、それとも諦めか。

 


俺は静かに目を閉じてそれを待った。

 

 

 

見えるのは。

考えている事を文章にするのは難しい物ですね。玉砕。こんちくしょう。