悩んでいても仕方がない。俺は静かに携帯のボタンを押した。
呼び出し音は鳴ることもなく受話器からナミの声が響いた。
「ゾロ!?」
「・・・ああ、あ・・・あのさ、今から会えねえか?」
「今から?・・・ごめん友達が来るの。」
「ああ、ならいいんだ。」
「あ、でもまって。ゾロにも紹介したいの。うちまで来れる?」
「お前がいいなら。じゃあ・・・一時間後に・・・。」
電話を切って、ふうとため息を付く。珍しいなナミの友達か。
学校でも友人が少ないナミからそんな事を聞くのは珍しい事だった。
紹介したいか・・・。
その言葉の優しい響きに口元が緩む。
少なくとも嫌われてはいない。やはり思い悩むより一本の電話とゾロは笑った。
大きく伸びをして、部屋の隅に脱ぎ捨ててあるコートを手に取る。
鼻歌が出そうなほどの上機嫌でゾロは部屋を出ていった。
ナミの家の近くまでくると見覚えのあるオレンジの頭が見えた。
出迎えてくれたのかと思い、手を振ろうとしたがナミの目線はこちらを見ていない。
逆の方向を気にして、寒い中で震えながらたっていたのだ。
多分あちらから友人が来るのだろうとゾロは足を早めた。
ちょうどその時、ナミは誰かを見つけたらしく、ぱっと顔が輝いた。
「ナミ!」
その方向からナミより少し背の高い青年がかけて来た。背にしょっていたナップサックをうっとうしそうに投げ捨てて、ナミに駆け寄りそのままの勢いで抱き締めたのだ。
「・・・・・・・・!!!!!!!」
ナミも嬉しそうな笑みを浮かべてその背に腕を回す。俺は驚きのあまり声も出ず、その場に立ち尽くしていた。
まるで恋人同士の再会のように抱き合う二人を目にしたまま。
「ごめーーーん。紹介遅れたわね。彼はルフィ。幼馴染みなの。」
屈託のない笑顔で紹介され、肩の力が抜ける。
「なんだよ。男出来たのなら教えろって言っただろ?」
「だって、教えようにもどこにいるのかわかんないじゃん。あ、ルフィはね、高校中退して世界を放浪しているの。」
ほうほうと話半分に聞き流す。ナミの笑顔に面白くないものを感じながら出されたお茶をすする。
「よろしくな。」
握手を交わすと最後にぎゅうと力を込められた。
・・・・・・・ん?
「なあ、俺の親しらねえ?家にいないんだけど?」
「さあ・・・?最近会ってないわねえ。」
「鍵なくて入れないんだよな。泊めてくれよ。」
ん?
「いいわよ。ちょうどノジコもいないし。」
ん!?
「やり!んじゃ、久しぶりに一緒に風呂入るか?」
はあ!?
「やだ!もうそんな年でもないじゃん。」
「まてこら!おい!お前!うちに泊れ!いいな!ナミ!」
有無を言わさず、ルフィとやらの襟首を掴み家まで連れていった。