私と私2

 

家の扉をあけるとやけに殺風景に感じる。
何を感傷的になっているのか、先ほどまでナミが触れていた腕だけがやけに熱い。
「はあ。」
ひとつため息をついて、靴を脱ぎ捨てる。歩きながらコートやセーターを脱ぎ捨ててバスルームへ向かった。


ざあ、と熱いシャワーを頭から浴びる。体温よりも熱いシャワーを浴びているというのに先ほどよりも腕が熱く感じる。
コート越しでもわかるナミの柔らかな身体。抱いていたのは随分遠く感じるが、その感触も香りも覚えてる。

 


ここに来る時はいつも欲しそうに誘うようにキスをしてきた。
細い腰を引き寄せて首筋にキスをしてやれば熱い息をほうと漏らす。背中をさすってやれば切なげな息をこぼして、熱くたぎった俺をあおるように腰を擦り付けたりもした。
ヤらしい女とかそんなこと微塵も思わなくて、俺を欲しがってると思うと馬鹿みたいに嬉しくなってた。

 


「あ・・・・。」
そんなこと考えてたらいつのまにかムックリと頭をもたげてきたそれに苦笑いをこぼす。
「しょうがねえよなあ・・・させてくんねえもんなあ・・・。」
そっとそれに手を這わせ、きゅっと握ってみる。


いつだったかナミもそうやって面白そうにいじっていた。
こっちはそれ所じゃないってのに楽しそうに。


細い指が絡んで、赤黒い俺と白い手がやけに目について、上から見下ろすナミの胸元に釘付けになって、柔らかそうな唇が重なって、視界がナミだけになって、長いまつげが、手、が・・・

 


「は・・・く・・・!」
ナミを思い出すとどうしようもなく身体が疼く。ヒートアップする思考と一緒に手も速度を増し、身体も追い詰められる。


ああ、抱きてえ、抱きてえ。どうして逃げる。何を考えている。

 


ぬるりとした感触に一瞬我に帰った。ナミも手を止めてちらりと下を覗き見る。ふっと視線を戻して目を見たまま笑って。

 


どくん。と大きく脈打って頭の奥が白くなる。身体を駆け抜ける一瞬の快楽にしばし我を忘れる。
壁に手をついて溜まった欲望を絞り出した。白い液体がバスルームの床を汚す。
「はあ・・・はあ・・・。」
どくどくと耳障りなほどの心臓の音で頭の奥が痛くなる。
床の汚れと汗を流すためにシャワーのコックをひねると冷たい水が身体を打つ。
この時期には冷たすぎる温度だが、身体にこもった熱を冷ますにはちょうどいい。
身体をがしとがしと拭いて、少しだけ軽くなった身体をどうとベッドに横たえた。
先程出したばかりなのにまだ刺激を求めている身体を持て余して、ごろごろとベッドの上を転がる。
ついつい、残り香が残ってないかと布団に鼻を突っ込む自分がおかしい。
こんなときサンジなら適当に女を引っ掛けてどうにかするんだろうな。
あいにく俺にはそんな話術もないし、ひっかかる女もいないだろう。それよりも何よりも今はナミしか抱きたくないんだ。

 

 

「あら?久しぶりね。」
聞き覚えのある声がして振り返るとそこには肩で切りそろえられた黒髪の女性がいた。
「・・・ロビン・・・。」
「覚えててくれたの?うれしいわ。」
にこりと笑う顔。

忘れようとしても忘れられない。俺の始めての、女。


「稽古帰り?ちょうどよかった。あっちに美味しいレストランがあるの。」
俺の意見を聞こうともせずにさっさと歩き出す。まったく、相変わらず女だ。
有無を言わせない雰囲気が背中からにじみ出ている。それについていってしまう俺もまだ修行が足りないのかもしれない・・・。


「口にあうかしら?」
目の前に出されたのは綺麗に皿に盛られた料理。旨いことは旨いが、こういう気取った料理はどうも慣れない。
「大会・・・近いの?」
「ああ・・・。」


思い出す。あれは確か高総体の決勝戦で、どっかの企業のお偉いさんが見に来てたんだ。その秘書として一緒に来ていたのがロビンだった。


「大変ねえ。こんな遅くまで。」
「・・・別に。」
「そう。一人暮らしの割にちゃんと食べてるみたいだし。彼女出来たのね。」
その言葉にフォークを持つ手が止まる。
「関係ないだろ。」
「そうね。でも後ろで聞き耳立ててる可愛い女の子がいるから。」
それにぎょっとして後ろを振り向くと見なれたオレンジの髪が目に入った。
「ナミ!?」
ゆっくりとふりかえる顔には明らかに怒りの表情が浮かんでいた。

 

 

目撃どきゅん。

ニコゾロ?と、いうか一方的に食われた系。
詳しくは次回。